3. フォーマルスーツの種類
フォーマルは「正装」というだけに、やはり階層があります。単純にわけると最上位から、「正礼装」「準礼装」「略礼装」となります。これは式などでの立場やTPO (Time, Place and Occasion)に分けて着用することになります。男性たるもの、普段はTシャツにデニムでも、こうしたハレの舞台ではしっかり装いを改めたいものです。
3-1正礼装
フォーマルの中でも最上位となる「正礼装」についてです。普段、あまり議論される機会はありませんが、正礼装はデイタイムとナイトタイムで使い分けるのがスタンダードと言われております。
デイタイムの正礼装は「モーニングコート」です。いわゆる通称「モーニング」と呼ばれるスタイルで、上着の後部が長めに仕立てられており、スラックスはグレーのストライプが基本とされています。いわゆる「式典」などはデイタイムに開催されるケースが多いため、公式行事などでよく見かけます。
これがナイトタイムには「イブニングコート」となります。男性のフォーマルとしては最上位となるのが、この「イブニング」。英語でも「スワローテイル」の別名があり、日本語でも「燕尾服」と形容されることもしばしば。
かつては、シンプルに「テイルコート」と呼ばれるようになりましたが、やがてフロントを閉じない仕立てに変化し、現在のイブニングコートとなります。「モーニング」との大きな違いは、白いボウタイを着用する点。
もっともイブニングを纏うとなると、それ相応の格式高い式に招待されることが前提。オーケストラの指揮者が着用しているように、一般のサラリーマンなどが身につける機会はそう多くはありませんが、知識としておさえておきましょう。
3-2 準礼装
準礼装もデイタイムとナイトタイムにわけられます。デイタイムは「ディレクターズスーツ」が活躍します。
ディレクターズスーツは、結婚式などでスピーチを担当するなど来賓が着用するケースが多いようです。ブラックジャケットにグレーベスト、コールスラックスが基本スタイルです。もともとは、主にヨーロッパで、経営陣、取締役などが執務着として好んで使用しました。よってその地位を示す「ディレクター(director)」から、この呼び名が定着しました。
略礼装となるブラックスーツのジャケットとモーニングのスラックスを組み合わせ、このスタイルとするケースも散見されます。
ナイトタイムの正装は「タキシード」。立食のディナー・パーティなどで活躍します。映画『007』シリーズでは、ひと作品に一度はジェームズ・ボンドが着ているイメージがありますね。ブラックタイまたはブラックのボウタイをあわせるのが基本となり、ブラックとホワイトのモノトーンでまとめるのがシックとされます。
タキシードは、格式ある式典に主賓として招待されない限り、正礼装の代用として用いてもしても場違いにはならず、汎用性も高いため、成人男性という自覚がある方なら、いざという時のために一着は用意しておくべきアイテムと言えるでしょう。
3-3 略礼装
ちょっとした余談ですが、これまでご紹介した礼装の際は、移動手段なども少し頭に入れておきたいものです。モーニングやタキシードを着たまま山手線に乗り込んでいる方はなかなか見かけません。どうしても電車などの公共交通機関で移動しなければならない場合は、会場のドレッシング・ルームなどで着替える算段なども想定しておきましょう。
そんな中、公共交通機関での移動も許容されるフォーマルの中では、もっともカジュアルな出で立ちが「略礼装」です。結婚式、披露宴などに招待された一般的ゲストが着用するスタイルです。おそらく社会人としてデビューされた方なら、最初に手に入れるフォーマルが、略礼装のブラックスーツであるケースは多いでしょう。
「フォーマルを身にまとうのは初めて」というビギナーにとっても、いわゆるビジネススーツと比較して、アイテム的にもほとんど変化なく、違和感なく着こなすことができるはずです。
結婚式などのビジネススーツで現れても笑い者にされることはありませんが、「あの方、フォーマルも持ってないのか」とレッテルをはられることは避けられません。まだ手に入れてないビジネスマンはご一考を進めます。
披露宴では席次で着こなしが決まる