5. 喪服としての着こなしの注意点
喪服について、もっとも留意しなければならない点は、「華美にならない」の一点に尽きます。まず、お通夜、告別式ともに同様ですが、「呼ばれて嬉しい」場ではありません。歓迎されるべき場でないにもかかわらず、あまりにも凝った出で立ちで現れるのは、「不幸を待ち受けていた」とも受け取られかねません。
5-1 立場によってスールの種類を選ぶ
これまでに記した通り、フォーマル、「公式」の場の装いでありながら、これまでとは一転、めでたい席ではありません。どの立場においても、シンプルである点を心得たいものです。
基本的にはブラックやグレーのできるだけ目立たないスーツの着用が無難です。喪主や親族ではない弔問側であるなら、シンプルなブラックスーツにブラックタイで十分です。さらに注意するのであれば、流行り廃りに流されないスタンダードなフォルムのスーツならより問題はありません。
ビジネスマンとして役職者となって来ますと、社会的立場もあり、ダブルのブラックスーツを喪服の代表格として着用される方も多いようです。若くとも社内でそれなりの役職を与えられている方は、ダブルのスーツを考慮してもよろしいでしょう。ただ、時代の変化もあり、「ダブルよりもシングル」という方も多くなりました。
ビジネスマンとしてある程度の立場となると、いつ何時、取引先などの不幸を耳にするかわからないという観点から、ブラックタイやブラックシューズを職場に常備している役職者も多いようです。冠婚葬祭のうち、不幸以外はあらかじめ日程を知らされているケースが多く、それにむけての段取りにも余念がありませんが、こと不幸となると突然の訃報もあり、あらかじめ心得てべきかもしれません。
もっとも突然の不幸であるがゆえに、必ずしもフォーマルでなければ「許されない」わけではありません。「訃報にまずは駆けつけた」という状況もありえます。あまり華美なビジネススーツでなければ、ブラックタイを着用することで代用も可能です。
建築業などの業種によっては現場から作業着のまま駆けつけるような方も見受けられます。最後のお別れになりますから、まずは追悼の意を体現することがもっとも重要かもしれません。
なお、喪主に限っては葬儀の際、モーニングを着用するなど格式を重んじるケースもあります。必ずしも必要ではありません。
また弔事を担当される場合は、ビジネススーツではなく、フォーマルなブラックスーツで望みたいという点だけは心得ておきたいものです。
5-2 シャツ
男性のシャツは、ホワイトです。こうした時のためにも、男性としてスタンダードなホワイトシャツはマストアイテムです。もちろん、ホワイトであってもドレスシャツなどは避けてください。また、ボタンダウンもオススメはしませんが、突然の出来事ゆえ、許されないというほどではありません。
さらにストライプなどの柄物もできるだけ避けたい機会ではありますが、ビジネススーツで駆けつけなければならない状況も想定されますので、あまりにも華美なコーデでない限り、目くじらを立てられることもありません。
5-3 ネクタイ
ネクタイはブラックタイです。盛夏であろうとクールビズであろうと、不幸の際にブラックスーツも含め、ブラックタイ着用がマナーです。できるだけ光沢のあるものは避け、無地のブラックタイを用意しましょう。
時間に限りがあり、ビジネススーツで駆けつける際なども、できればブラックタイだけは調達したいものです。前述した通り、ビジネスマンでもある程度の役職者になると職場に準備している方もいらっしゃいます。気のおけない上司なら、お借りできるかもしれません。
また、紳士服量販店では「通夜、葬儀セット」として販売しているケースも多く、駅のキヨスク、駅構内のコンビニで入手できることもあります。万が一の場合は探してみることをオススメします。
5-4 靴
靴もブラック一択です。フォーマルの常識として結婚式と同様、プレーントウ、ストレートチップとスタンダードが好ましいです。紐付きのほうがよりフォーマルと捉えられていますが、ここでは紐なしでも問題ありません。ソックスもローカットではないブラックです。ダークネイビーなどでごまかさず、しっかり無地のブラックを用意しましょう。
結婚式でも紹介した通り、ブラックのプレーンは靴としてあまりにも定番。社会人の必須アイテムとして、しっかり選びぬき、常備したいものです。
やはり補足しますが、ビジネススーツで駆けつけた…という方は、この限りではありません。会社帰りの通夜で靴を新調するというのもままなりません。華美なものでない限りは、非常識と受け取られることもありません。
5-5その他の小物
不幸に向け用意しておきたい小物に、香典袋、数珠、無地のホワイトのハンカチがあります。日本の場合、宗教上の理由がない限りお別れの会は仏式のケースが多いため、数珠を手にすることで死者を悼む気持ちの現れとなります。
また、お香典を直に鞄やジャケットのポケットから出すよりも、香典袋を開いてお渡しするのをエチケットと見る向きもありますので、準備しておきたいもの。ハンカチはプレーンのホワイト。タオル地のものは避けたいですね。
ある程度の年齢、地位になると、ネクタイを含めた小物類はセットで準備しておくと、いざという時に慌てないものです。ブラックタイ、ブラックのソックス、香典袋、数珠はセットにし所定の場所に常備しておくと良いでしょう。アクセサリーなどは基本的に外すもので不要です。
黒が濃いほどフォーマルの価値が上がる