TBS『朝ズバッ!』の不二家バッシング報道
不二家問題に関する多くの報道は、食品衛生法や食品の製造実態についての無理解や誤解に基づくバッシングだったが、その中でも特にひどかったのは、TBSの情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』だった。
この番組での不二家関連報道は、1月中だけで合計3時間40分、1日平均15分に及んでいた。
『朝ズバッ!』は、取材結果のVTRに基づき、司会者のみのもんた氏が、視聴者の声を代弁するように、素人的な観点から「ズバッ!」と言いたい放題のことを言い、コメンテーターとして出演している弁護士・評論家・TBSの解説委員などが、みの氏の発言に同調する発言をする、という構成だった。
それによって、みの氏の「ズバッ!」発言が、社会全体で是認されているように印象付けるものだった。
『朝ズバッ!』では、生菓子の原料の問題から始まって、チョコレート、クッキーなどの一般の菓子についても、異物混入などを取り上げ、バッシングの対象は不二家の全製品に及んでいた。
不二家製品は、全国のスーパー、コンビニ等の売り場から撤去され、1月末には缶飲料まで製造停止に追い込まれた。
その結果、生菓子のフランチャイズ店の20%が倒産・廃業に追い込まれるなど、その社会的影響は甚大だった。
2007年2月中旬に開いた信頼回復対策会議の終了後、事務局を務めていた不二家の社員の一人が、「この番組だけは許せないんです。先生、何とかできませんか」と言って、『朝ズバッ!』の報道内容に関するファイルを私に渡してきた。
そのファイルは、「新証言 不二家の“チョコ再利用”疑惑」と題する報道を行った1月22日の『朝ズバッ!』での報道に関する資料だった。
番組内容の詳細に関する資料と、この放送に関する不二家側とTBS側との交渉経緯を記載した資料が綴られていた。
チョコレート再利用報道と「顔なし証言」
1月22日の放送では、
「情報提供者は、不二家平塚工場の元従業員。彼女によれば、賞味期限が切れたチョコレートの包装をしなおしたり、溶かし直して再利用していた、というのです」
というアナウンサーのナレーションに続いて、不二家・平塚工場の元従業員と称する女性が「首から下だけの映像」で画面に登場して、
「チョコレートの包装をし直したり、溶かし直したりしていた」
と証言し、それを受けて、司会のみのもんた氏が、溶かしたチョコレートに牛乳を流し込むイラストのフリップを示しながら、
「賞味期限の切れたチョコレートと牛乳を混ぜ合わせて新しい製品として再出荷しちゃう」
などと決めつけるように言っていた。
さらに、翌日の番組で不二家の新社長就任を伝える場面では、みの氏が
「古くなったチョコを集めてきて、それを溶かして新しい製品に作り直すような会社はもうはっきり言って廃業してもらいたい」
などと発言した。
このように、徹底して不二家をこき下ろしていた『朝ズバッ!』だったが、その放送内容には明らかな誤りと不合理な点があった。
第一に、チョコレートを牛乳と混ぜ合わせてもうまく固まらない。そもそも、そのような工程はチョコレート工場にはない。
第二に、平塚工場で製造する不二家のチョコレートは「LOOKチョコレート」を始め、フルーツペーストやナッツを含んでいる商品ばかりであり、単純に溶かして成形し直しただけでは製品にならない。
第三に、小売店からチョコレートを回収して再利用することは、配送や包装を取り外して再包装するコストを考えたら、経済的に割が合わない。