知られざる「ウーバーイーツ」の舞台裏。飲食業界の黒船が急成長を遂げたワケ

 

加盟店が20倍に増えた~店も配達員も儲かる秘密

ウーバーイーツの象徴ともいえるのが料理を運ぶバッグ。実は毎年のように、進化を遂げている。

「例えばタピオカティーが流行したから、ドリンクホルダーを付けました」(武藤)

また、従来のバッグではピザの注文が入った時に入れることができなかった。そこで手直ししたのが、バッグの下の部分。蛇腹にして引っ張り出せるようにし、大きなピザも水平のまま運べるようにした。「常に改善です」と武藤はいう。

東京で生まれた武藤は、社長だった父親に憧れ、自分も社長になると勉強を頑張った。大学を卒業後は大手外資系コンサル企業に入社。寝る間を惜しむ働き方で自分を磨いた。

「月、火、水の睡眠が40分、木曜は徹夜で金曜が最終報告会。それが一番タフな1週間でした。やり抜く根性というのを学びました」(武藤)

やがてITバブルが到来すると、武藤もその波に乗ってコンサルをやめ、25歳にして友人とBtoBのマッチングサービスを行うIT企業を起こした。事業は軌道に乗ったが9ヶ月で楽天に売却。武藤自身も楽天に移り、統括本部長として活躍した。

その後は、グローバル企業を渡り歩き、グーグルの新規顧客開発・日本代表も務めた。

そんな武藤に2018年、ウーバーイーツの日本代表にならないかと声がかかった。しかし、その頃のウーバーイーツは東京・神奈川・大阪の一部地域だけで展開する先の見えないベンチャー企業だった。

「まだ海の物とも山の物とも分からない状況でしたが、絶対にこれは大きくなる。使っていて便利だったので、「みんなに知ってもらいたい」という使命感がありました」(武藤)

とにかくウーバーイーツを広げなければならない。鍵を握るのは配達員の確保だと考えた武藤は、配達員のモチベーションをアップさせる手を打っていく。

例えば去年からチップがもらえる機能を導入。前述のナナさんも「モチベーションになります」という。だいたい4人に1人はチップをくれるという。

さらに、稼ごうと思えば稼げるシステムも取り入れた。鈴木優さん(41)は配送ドライバーをやめ、ウーバーの専業配達員となった。収入は「多い時で月70万円」と言う。

稼げる秘密の一つが地図にあった。注文が殺到しているオレンジ色のエリアで配達すると、報酬が上乗せされるのだという。さらに「月曜から木曜の4日間で80回配達すると1万1070円のボーナスが出ます」(鈴木さん)。配達回数をクリアするごとにボーナスを用意。鈴木さんは昼過ぎからから終電まで毎日出動し、配達80回を目指してペダルを漕ぎ続けている。

さらに、配達員達が待ち望んでいた新たな仕組みも作った。専用の保険だ。対人、対物、配達員の傷害補償の保険料をウーバーイーツが負担する。

こうしたあの手この手で配達員を増やし、配達エリアを32都道府県まで拡大させた。

「こういった新しい働き方が増えるのはうれしい。「やった」という感じがします」(武藤)

エリアが広がると、意外なところからも声がかかる。武藤が向かった先は100店舗以上を展開する雑貨店フランフラン・青山店。食品を扱っていない店の初めての加盟だ。買える物はまだ限られていて、インテリアにもなる加湿器やアイスコーヒーなどに使えるタンブラーなど30品目。これらを注文すると30分で届けてくれる。

「プレゼントの需要として、自分が受け取り渡しに行くこともできるし、直接贈りたい相手に届けることもできます」(武藤)

プレゼントには欠かせない機能も追加。希望すればラッピングもしてくれる。

「料理に限らず、『今これが欲しい』というニーズを満たせるサービスに進化して、毎日使ってもらえるサービスになっていきたいと思っています」(武藤)

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