本日の書評は税理士の見田村氏が書かれている、相続税対策の本についてです。本書は「金持ちファミリーの」とあるように、資産のない人にとっては無関係のように思えます。しかし、本当に相続税は自分と無関係な話なのでしょうか。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)
プロフィール:姫野秀喜(ひめの ひでき)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。
「相続」問題への対処方法をケースバイケースで答える良書
『金持ちファミリーの「相続税」対策 ここを見逃すな!』
著:見田村元宣/刊:すばる舎
一億総中流の団塊の世代が、一億総相続税課税対象に
近年の税法の改正による、相続税における基礎控除の減額は著しいです。元々「5000万+1000万円×法定相続人数」だったものが、今や「3000万+600万円×法定相続人数」となっています。
この基礎控除額は、都内で自宅を持っていたら、越えてしまう可能性のある金額です。そう、一億総中流ともてはやされた団塊の世代が、この世を去るときには、一億総相続税課税対象になるということです。これから不動産を買ってドンドン資産家を目指そうとしている人にとっては、将来に立ちこめる暗雲以外の何者でもないでしょう。
本書は、人々がどうしても口に出しづらく、やっかいな「相続」という問題に対して、どうアプローチするべきか、ケースバイケースで答えている良書です。特に、不動産投資に関連する、土地を相続するときの有効な相続税対策については、他の書籍よりも豊富な例が掲載されています。業者の口車に乗せられて、アパートを建てるだけで相続税対策になるって思っている人必見。もちろん、これから頑張って資産を増やしていく人も転ばぬ先の杖で知っておくべき本です。
以下、著者の言葉を抜粋しながら内容を紹介します。
孫名義の預金通帳にお金を入れるだけじゃダメ
孫の知らないところで勝手に孫名義の定期預金をつくっていた
→ 成立していない
つまり、課税対象になる
毎年110万円までの贈与税はタダだから、110万円までにすべき?
相続税との比較によっては、必ずしも110万円にこだわることなく、例えば贈与の最も低い税率(中略)贈与をしても、まだ得である可能性がある
贈与税と相続税は、その金額により税率が変る(累進課税)ので、実は、贈与税を支払っても、将来支払う相続税より得する場合がある。つまり、ちゃんと計算して、判断する必要があると言うこと。
相続対策のアパートは必ずしも得策ではない
相続税対策で
多いのが、「借金をして被相続人名義の土地に、被相続人名義で建物を建てる」というケース
「借金をすること」が本当に節税になっているかどうか
手元の現金を使ってアパートを建てた場合と
借金をして建てた場合と純資産額は「全く」変らない
そういうパターンもある。
これも、ちゃんと計算して、判断してねってことです。
Next: 賃貸物件の建て替え中に相続が発生したら?
同族会社によるサブリースで賃借人を固定して、節税対策を行う
1.父親の土地・建物
↓
2.同族会社サブリース
↓
3.父親の建物を子供に贈与
↓
4.将来、父親の土地の相続
ポイントは上記3と4の時点
この両時点で建物所有者が貸している相手(=賃借人)が異なっていると、「土地の評価額の減額」という効果は維持できなくなってしまう
※通常、賃貸アパートが建っていたら、その土地評価額は20%減になり、相続税が減るはずなのだが、3と4の時点で賃貸人が変っていると、その効果がなくなるということ。
そこで、サブリースを間に入れると、賃貸人がずっと、そのサブリース会社になるので、賃貸人の変更がない。すなわち、相続税が減額されるよ、ということです。
これは、結構トリッキーなのですが、かなり使えそうな対策だと思います。
賃貸物件の建て替え中に相続が発生したら
建替え中の場合、賃貸物件として、減額が認められるときと、認められないときがある。
認められるための
具体的な条件としては、
(1)旧建物の賃借人が、引き続いて新建物に入居することになっている
(2)退去料の支払いがない
(3)新築中の建物につき権利金の授受が完了し、賃貸借契約が成立済み
※3点目を平たく言うと、サブリースの契約が成立済みってことです。
マンションの駐車場を住人以外に貸すと相続税が上がる
駐車場が空いているからといって、同じ敷地内とはいえ「入居者以外」にも貸せば、「更地評価×約80%(=土地評価の約20%減額)」という効果はなくなってしまいます
その駐車場全体の土地評価は高くなってしまう
→つまり相続税が上がる
その対策については…(本書にちゃんと書かれてます。面白いですよ)。気になる人は買って読んでみてください。
総括
相続する資産において、相当な割合を持つ不動産。しかし不動産は現金と違い、一つ一つ形も大きさも違う。その評価額だって、状況によって大きく異なってくる。
大規模な土地を大規模なままにすべきか、アパートを建てるべきか、駐車場にするべきか、共有すべきか、分割すべきか。それは、相続する人、される人、されるモノの状況、残された年数によって異なります。
本書では、様々な事例を挙げ、上記のようなケースバイケースの状況を解説しています。ある人の対策は、別の人の対策にはならないわけで、自分自身の状況に照らし合わせて、戦略を練り直す必要があります。本書はその戦略を考えるきっかけとなる一冊だと思います。でわでわ。
『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』(2016年8月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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