今回取り上げるのはGAP<ティッカーコード:GPS>です。日本では既に報道もされていませんが、海外や投資家の中では、負け組アパレルとして、かなり報道されています。みなさんがGAPに持つイメージは人それぞれでしょうが、「UNIQLOよりちょっとダサいし、イケてない」というイメージではないでしょうか?
しかし、それは、まさに今、株価に反映されています。絶賛暴落中です。まだ黒字なのにですよ?もしかして、今が買いなんじゃないでしょうか?さらに言うと、GAPは、GAPブランドから脱却を計っており、Old Navyや、Banana Republicなどのブランドを展開中です。もう、日本人が知っている昔のGAPじゃないのです。(『バフェットの眼(有料版)』八木翼)
GAP株は「いまが買い」なのか?バフェット視点で徹底分析!
Q1:その企業は消費者独占力を持っているか
アメリカのUNIQLOと言っても過言ではないでしょう。Old NavyやBanana Republicといった、ブランドで再起を図りつつあり、それは、うまく行っているように見えます。消費者独占力を持っていると言えます。
また、世界のアパレルブランドの売り上げランキングでは第3位。米国では第1位の地位にあります。
※備考:アメリカのオフプライスストアー(アパレルや小売チェーンが換金目的で放出したブランドを扱う)のTJX、Rossは2次流通とみなし、除外された状態です。
ちなみにですが、Old Navyの売上は、既にGAPブランドの売り上げを追い越しています。今後の成長にまだまだ期待できます(日本でもそんなに見ないですからね)。
ちなみにコチラがGAPのネット販売用ホームページです。意外にオシャレですよね。
GAP<GPS> 月足(SBI証券提供)
Q2:その企業を理解しているか
服の製造業者です。ユニクロ同様、単価の安い国で大量生産。それを先進国で売るというビジネスモデルです。UNIQLOより利益率もいいですし、優秀だと思います。
Q3:その企業の製品・サービスは20年後も陳腐化していないか
この質問は、2つに分けられます。
- 業界自体がまだ残っているか?
- GAPがまだ残っているか?
まず1つ目の質問についてです。
1.業界自体がまだ残っているか?
自動車は20年後には自動運転に切り代わっているでしょうし、PCはマウントディスプレイに代わってるかもしれないです。携帯は腕時計になっているかも知れませんし、パズドラはもう流行っていないでしょう。
それでも、世界の人は、まだ服を着ているでしょう。
今後どんなに温暖化や、寒冷化があったとしても、服を着ないのは、法律に違反しますし、少なくとも世界共通の価値観と言っていいのではないでしょうか?
次に2つ目の質問を見てみましょう。
2.GAPがまだ残っているか?
ビジネスモデルとしては、非常に優秀と言えそうです。利益率も高いです。またGAPは、ブランドが失速したときも新たにブランドを再構築する技術を持っていることが、今回のブランドOld Navyを作ったことで分かりました。
私は10年後もGAPが生き残っていると考えます。
Q4:その企業はコングロマリットか
アパレルに特化していて、コングロマリットではありません。
Next: Q5:その企業の1株当たり利益(EPS)は安定成長しているか
Q5:その企業の1株当たり利益(EPS)は安定成長しているか
さて、この会社は、かなり自社株買い戻しに積極的な面があります。そのため、収益がそこまで高くなくてもEPSが高いのです。
それにしても、同業他社(ZARAを展開するInditex)などと比較しても、業績には大差ないのに、明らかに売られすぎです。ブランド構築も積極的ですし、GAPが悪い選択肢にはならなそうです。底堅く成長していますね。何よりすごいのが、あのリーマンショックの時も底堅い。
今後、中国の不動産や、FRBの利上げなどで、不景気に入る可能性もあります。そうしたとき、底堅い推移を安定して見せてくれそうな安心感があります。
年 | EPS(ドル/株)TTM | 前年比成長率 |
---|---|---|
2015 | 2.435 | -13.2 |
2014 | 2.805 | 0.1 |
2013 | 2.8 | 37.8 |
2012 | 2.0 | 17.8 |
2011 | 1.7 | -3.9 |
2010 | 1.8 | 26.3 |
2009 | 1.4 | 4.4 |
2008 | 1.4 | 39.1 |
2007 | 1.0 | -6.5 |
2006 | 1.0 |
年平均EPS成長率:5.5%
Q6:その企業は安定的に高いROE(株主資本利益率)をあげているか
決算年 | ROE |
---|---|
2015 | 36.62% |
2014 | 42.07% |
2013 | 42.35% |
2012 | 34.58% |
2011 | 27.26% |
2010 | 25.39% |
2009 | 21.61% |
2008 | 22.74% |
2007 | 15.40% |
2006 | 16.88% |
平均ROE:28.5%
うーん、高いですね。非常に。最近になってROEはさらに上昇している傾向を見せています。何でかなーと思って、バランスシートを入念に見てみたのですが(10年分見るのは大変なんですよ・笑)、売上もそこまで変わっていないし、コストもそこまで変わっていない。
なんででしょう?と考えたら、2012年に、一気に株主資産が減って、長期債務でその分穴埋めしているんですよね。「消えた株主資産はどこ行ったの?」と思うかもしれませんが、自社株が一気に減っているので、自社株買い戻しに使ったと思われます。
なんだか悪いように聞こえるかもしれませんが、自社株を買い戻すことで、株式の価値を高め、借金をすることで、成長の展開を遅らせないのは、非常に素晴らしいことだと思います(ちなみに、株主にはバフェットもついていますからね・笑)。
Q7:その企業は強固な財務基盤を有しているか
財務基盤を見る際は、自己資本率が良く使われますが、それはバフェット的にはNGです。長期債務に対して、どれだけ稼ぐ力を持っているかが重要と考えています。
今期の長期負債(百万) | 2,473.00 |
---|---|
今期の税引き後利益(百万) | 1,262 |
長期負債/税引後利益(年) ※長期負債を税引き利益で返済するのに必要な年数 |
1.96 |
2年以内に返すことができてしまいます。まったく問題ありませんね。
Q8:その企業は自社株買い戻しに積極的か
自社保有株式は、発行していないとみなしています。
今期発行済み株数(百万株) | 401.9 |
---|---|
10年前の発行済み株数 | 869.63 |
過去10年間に減少した株数 | 467.73 |
減少した割合 | 53.78 |
は、半分になっとる…私は長いこと株価の分析をしていますが、ここまで自社株買い戻しに積極的な株はみたことないですね…素晴らしいです。
Next: Q9:その企業の製品・サービス価格の上昇はインフレ率を上回っているか
Q9:その企業の製品・サービス価格の上昇はインフレ率を上回っているか
インフレにも対応していますね。原材料が上がると値上げをしています。
正直、GAPは、ここ10年間、利益を着実に伸ばしてきたというよりは、自社株買い戻しをして、着実にEPSを上げてきたといったほうが正確です。こりゃ素晴らしいわ。
Q10:その企業の株価は、相場全体の下落や景気後退、一時的な経営問題などのために下落しているか
PER:9.41
リーマンショック時以来の安さですね。売り上げが凹んで、暴落しています。買うなら今。さらに下がるならさらに買うという、強気の姿勢で臨んでもいいと思います。そう簡単に赤字にはならなそうです。
Q11:株式の利回りと利益の予想成長率を計算し、国債利回りと比較せよ
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Q12:株式を疑似債券と考え、期待収益率を計算せよ
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まとめ
いかがだったでしょうか?うーん、これはいいですね。
米株は今、中国不安とFRBの利上げ不安が入り混じっていて、不安の真っただ中です。そういう中で、たまたま悪い先行き懸念を示してしまっている企業に人は過剰反応してしまいます。
私はこっそり買ってみます。もしGAPが潰れたら、「あ、あいつ損したな(笑)」と、笑ってやってください。継続は力なり!ダメでもともと(笑)八木翼でした。
『バフェットの眼(有料版)』(2016年1月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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世界一の投資家、ウォーレンバフェットの投資方法を参考に、日本の会社を分析するメルマガです。「株をやったけど全然うまくいかなった。」「デイトレードなんてやってる時間ないよ。。。」という方にぴったりのメルマガです。私自身が実験台となり、本格的な長期投資を行っています。