本日発表の米5月雇用統計の失業率は1930年代以降で最悪の数字となることが確定していますが、株高が継続する流れとなっています。ご存知のように日経平均は2万3,000円に迫る勢いで、ほぼコロナ前の水準まで戻っています。この背景と今日の雇用統計の展望について解説していきたいと思います。(FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)
過去最悪でも株価が上昇し続ける理由
米国の5月失業率の予想中央値は19.8%となっており、労働人口の5人に1人が失業しているという、まさに最悪の状況にあるわけですが、株価は上昇し続け、米国のナスダック100指数は市場最高値を更新しています。
こんな最悪の状況で、なぜ上がり続けているのか?と不思議に思う方もいるかもしれません。
この背景には過去最大、歴史上類を見ない規模での財政政策(減税や給付金)と金融緩和(金利の引き下げ、社債やETF購入といった量的緩和)を実施していることが挙げられます。
世界全体で見ると今年だけでも10兆ドルの財政政策、さらに中央銀行も10兆ドル以上の量的緩和を行ったことで、途方もない金余り状態になっているわけですから、上がらないわけがないというのが今の株式市場です。
これらの世界的な動きを受けて、マーケットは完全に勘違いしているというか、もはや狂った楽観モードとなっており、最近は予想よりも良い数字が出れば最悪期は脱したとの見方でリスクオンの動きが顕著となっています。
まずはそのつもりで見ておきましょう。
先行指標が予想よりも良好でハードルが上がっている可能性に注意
前回の4月分と比べると、今回の5月分については大幅な改善傾向にあります。
もっとも、改善というよりは単にピークを過ぎただけではありますが、それでもマーケットは好感を示しているというのが今の相場です。
先行指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)
4月分からの改善ということはもちろん、予想値よりも良好な数字だったということも覚えておきたいところでしょう。
特に5月のADP雇用報告における雇用者数は、予想値が−900万人の減少だったのに対し、結果は−276万人と予想よりも減少幅が小さく、ポジティブサプライズとして受け止められました。
この乖離によって、5月の事前予想値は非農業部門雇用者数が−800万人、失業率が19.8%となっていますが、ハードルとしてはもっと強い、雇用者数の減少幅は小さく、失業率も低い内容が想定されていると考えられますので、十分に注意しておきましょう。
Next: 良好な数字が出れば、これまでよりも上値は伸びやすいでしょう――
悪化した場合は要注意も、基本的には一段高期待!
ドル円はリスクオフならドル高・円高、リスクオンならドル安・円安と、どちらにしても上値が伸びないパターンが続いていました。
しかしながら、先週からEU基金の創設、ドイツの財政政策、ECBの金融緩和と立て続けにユーロにとってポジティブな材料が出たことにより、ドカンと円売りが入って一段高となっています。
ドル以外にもユーロが買える状況、つまり円を売りやすい状況になったことが上昇の要因となっており、良好な数字が出れば、これまでよりも上値は伸びやすいでしょう。
想定レートは1ドル=108.50〜110.00円
109円台では入りにくいので、雇用統計前にやや反落して108円台に落ちてくれば軽くロングして雇用統計待ちでも良いでしょう。
108.40円には200日移動平均線が控えており、日足ベースで見ても108.50〜108.60円レベルは支えられやすそうですから、まずはここが下値目処でしょう。
ADP雇用報告の雇用の減少幅が非常に小さかったことを考慮するとサプライズもありそうで、まずは200日線を明確に割り込んだ108.30円に損切りを置いてロングというのが、基本的なトレード戦略となります。
もっとも、非農業部門雇用者数や失業率が悪かった場合、株価がどういった反応を見せてくるかが分からないので、その場合は一旦手仕舞い推奨です。
また、週末ですので予想より良好な結果が出たとしても、減少幅が−500万人未満となるなど、大幅な修正がなければ初動で手仕舞いしたほうが良いでしょう。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年6月5日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による