戸籍とマイナンバーが並立していることの不思議さを感じています。戸籍があるのは日本・中国・台湾だけ。戸籍がデジタル化の妨げになっているとの意見もあります。(『らぽーる・マガジン』)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2020年9月21日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
なぜ「戸籍」と「マイナンバー」が並立している?
今回は、「戸籍」と「マイナンバー」について考えてみます。結論が出る展開ではなく、あくまでも問題提起というものですが、常々、戸籍とマイナンバーが並立していることの不思議さを感じていて、マイナンバー制度の対局にあるのが戸籍制度ではないかと思っていました。
つまり、それぞれ違う存在意義によって、マイナンバー制度と戸籍制度があるのではと理解しています。すごくナイーブで、ある意味“アンタッチャブル”なテーマなのかもしれません。
保守、特に極右と呼ばれるイデオロギーの方々にとっては、戸籍の存在が重要で、戸籍廃止を唱えるだけで「売国奴」になってしまうようです。
菅政権下でのデジタル庁が話題になっていますが、マイナンバーカード運用の未来像から見ても、戸籍制度の存在を議論されても良いのではないかと思うのですが、まったく議論されないでいます。
今回の話には結論はありませんが、どうか皆さんも考えてみてください。伝統、習慣、歴史、そのようなもので語るべきなのか、戸籍は文化なのかなど、それが日本人のアイデンティティに繋がるのかどうかは理解できませんが、戸籍制度とマイナンバー制度は、どこかで折り合いをつけなければいけない関係にあるのではないかと思っています。
はんこの存在を議論するのとは、わけが違うようです。
戸籍も「家」から「個人」へ。その延長がマイナンバー制度?
戸籍とは、日本人が出生してから死亡するまでの身分関係(出生、婚姻、死亡、親族関係など)を登録し、公に証明するための公簿です。
現在の戸籍は一組の夫婦と姓を同じくする未婚の子を単位につくられています。「現在」とありますが、かつては個人が中心ではなく「家」が中心でした。「家」中心となると、夫婦別姓の問題も絡み、安倍政権を支えていた日本会議の存在が頭をよぎりますね。
戸籍とは日本人であることを証明するもの、日本人のアイデンティティだと主張している人たちもいます。
本籍と出生地は違うことがあります。たとえば、生まれた場所が病院であれば、その病院の所在地の最小行政区までが「出生地」として記載されます。
この「出生地」が、差別の温床になることがあります。部落差別が、生まれた場所に対する差別となり、その意味で、戸籍は差別の温床とする意見もあります。
結婚したらご主人の本籍に変更することから「籍を入れる」なんて言葉も生まれましたし、「バツイチ」というのは、奥さんの本籍を外すことで、謄本には奥さんの名前の上に大きくばつ印が記されていることから生まれた言葉です。
女性が男性の本籍地に入るというのも家制度から来ているものであり、実家のお墓には入れないという慣習も家制度によるもので、これらを考えても、果たして戸籍というものは必要なのかどうかは考えさせられます。
昭和23年に新しい戸籍法が施行され、戦前の「家」を基本単位としていた家制度は廃止され、夫婦とその子供(2世代)が基本単位とされることになりました。
「家」から「個人」へ。この流れがマイナンバー制度なのでしょうが、未だに戸籍というものが存在することで、話がややこしくなっているような気がします。
Next: 戸籍がデジタル化の邪魔をしている?名前の読み方は不問という謎
戸籍がデジタル化の邪魔をしている?
電子化が進まない理由として、戸籍の存在があるという指摘もあります。
戸籍に住所と名前を記載してもらうことで、日本人であることが証明されるのですが、かつては、この戸籍が盗用されたりしたことがあり、実は、それは今でも外国からのスパイは、日本の戸籍を盗むことで、日本人としての証明を手に入れることができるというのです。
日本にいるスパイと呼ばれる人たちは、日本戸籍を手にしています。戸籍制度があるから、スパイを炙り出せると、戸籍維持派は主張していますね。余談ですが、戸籍乗っ取りを、警察用語(隠語)では「背乗り(はいのり)」と言うそうです。
この戸籍に名前を登録するのは、「漢字」を登録します。呼び名ではありません。その漢字をどう読まれようと、戸籍の世界ではまったく関係ありません。「太郎」と漢字を登録して「はなこ」と読ませても、まったく問題ないのです。
これはデジタル化にとって、大きな障害となっています。日常での呼び方と違う漢字が登録されるということは、海外では絶対にありえないことで、「たろう」は「TARO」で統一です。
また漢字がデジタル化を阻んでいる例として「サイトウ」があります。呼び名は「saitou」でも、漢字表記は
斎藤
斉藤
齋藤
齊藤
西東
とまあ、こんなにあります。「コウ」という字も「高」「髙」があり、「タカハシ」にも「髙橋」「高橋」「高梁」があります。これらすべてが、デジタル化するにはまあ大変な障害となっているのです。
マイナンバー活用ではなく、単にプラスチックカードを作りたいだけ
マイナンバーを、各個人に割り振っているにも拘らず、国民1人に10万円を配る際にも、住民基本台町(住基ネット)でアナログな方法で所在を確認するということを行っています。
マイナンバーカードに銀行口座を紐付ければ給付はスムーズになるというのは、まったくの「嘘」ですね。
マイナンバー制度は、国民1人ひとりにICチップを持たせることが目的で、そこに個人情報を集約することにあります。それはカードである必要はないのです。
ただそのカードが健康保険証になり、運転免許証になるようですが、要は、プラスチックのカードをどうしても発行したいようです。
元官僚の人が、すでに予算をつけてカード発行で動いてるので、後戻りはできず、とにかくカードは発行しなければならないそうなのです。
平井デジタル担当大臣は、カードの先にはスマホがあると言っておきながら、まずはカードを発行して、その後でスマホ活用するらしく、いまからカード発行を飛ばしてスマホ活用とはいかないようなのです。
マイナンバーカードを持っていると、身分証明証に使え、コンビニで住民票や戸籍謄本が手に入ります。マイナポイントも使えます。それから…どうなるのでしょうか?むかし高市総務大臣が、買い物などでのサービスポイントをマイナンバーカードで一元化するようなことを言っていましたね。
Next: カードがなくても管理できる。なぜ戸籍の存続は議論もされない?
戸籍があるのは日本・中国・台湾だけ
マイナンバーカードを発行しなくても、今の段階で国民ひとりひとりに番号が割り振られているので、いくらでも情報管理することができるはずです。
今の段階で、本籍、現住所、引っ越し履歴、運転免許証更新記録、違反記録、入通院投薬履歴は一元化できるはずです。
デジタル庁は、縦割り行政をデジタルにより横断化するのが目的のようですが、省庁ごとに言語が違うようないまのシステムを、どうやって横断化するのでしょう。
国益よりも省益が優先される霞が関ですからね。平井新大臣は「戸籍制度に手を付ける権限はない」と言っていました。
戸籍があるのは、日本と中国と台湾だけで、2007年に韓国では廃止になりました。日本で一番最初に戸籍制度ができた6世紀中頃から数えると、約1,200年近く経っています。
その後、明治19年、明治31年、大正4年に細かい戸籍の様式の変更が加わります。戦前の戸籍は「家制度」の考え方のもと、「家」を基本単位とし、「戸主」と呼ばれる家の家督を継いだ一家の責任者の役割(戸主権)が存在していました。長男が家や相続財産を継ぐという慣習もその頃のものです。
戸籍とは「戸(こ/へ)と呼ばれる家族集団単位で国民を登録する目的で作成される公文書」です。未だに「戸」が中心の証となっているこの制度は、これからの未来に必要なのでしょうか?
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- 問題提起:戸籍は必要か…(9/21)
- 選挙絡みのマーケット(9/14)
- 米株式市場下落の舞台裏~ソフトバンクと素人個人投資家(9/7)
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- 「ワクチン開発を待つマーケット」(8/17)
- 「金価格が高騰」(8/10)
- 「日本の景気はかなり厳しい…」(8/3)
『らぽーる・マガジン』(2020年9月21日号)より一部抜粋
※タイトル、本文見出しはMONEY VOICE編集部による
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