ワタミ過労自殺裁判を新聞各紙はどう伝えたか

 

すべての企業で実行されるべき防止策

【毎日】は社会面だけでの対応。27面に「ワタミ1億3,000万円賠償」の見出しで、労働問題専門の東海林智記者が書いている。見出しの2行目には「遺族意向に沿い和解」とある。

東海林記者による解説は、従業員に過重労働を課すと、大きな代償を払うことになることを改めて印象づけたとしたうえで、再発防止策に焦点を合わせている。和解条項に盛り込まれた再発防止策は、サービス業に限らず、多くの企業が取り入れるべきモデルだとしている。労使が残業時間の上限について締結する36協定については、和解事項の中に、「協定更新時に残業時間を短縮することが盛り込まれた」という。タイムカードを打刻した後に働かせることがないよう、厳格に労働時間を管理し、研修会なども労働時間に含めて記録するという。記者は、これらを「過労死や過労自殺を防止する有効な策」と評価する。

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見出し2行目は少し誤解を生みかねない表現だが、これはリードに「遺族側の意向に全面的に沿った和解となった」と書いてあるのを読めば意味がハッキリする。遺族の意向が和解だったという意味ではなく、和解の条件が原告である遺族の意向通りだったということ、早い話、遺族の全面勝利ということだ。

東海林記者の解説は、僅かな紙幅の中でこの和解の意義を正しく強調するためにはどこに照準すべきかを考えた上で、それを「再発防止策分析」に置いたものだと感じた。今野晴貴氏は「すべての日本企業はブラック企業になり得る」と著書に書いていることを考え合わせれば、和解条項に示された再発防止策は、すべての企業で実行されるべき事柄だということが可能だろう。

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