三井氏の返答 1
Aさん、はじめまして。写真家の三井です。息子さんの状況はわかりました。大変ご心配だと思います。心中お察しします。
状況から見て、息子さんが「ガヤの実家詐欺師」に騙されている可能性は高いと思います。息子さんのこれまでの経緯は、僕がブログに書いた事件と酷似していますし、他にも同様の詐欺師に引っかかったという人は何人もいるようですから、息子さんと一緒にいる人物はおそらく旅人を騙す詐欺師でしょう。
もし、その「ラージ」という人物が詐欺師であるなら、日本人と結婚しているというのも嘘でしょうし、ラージという名前も偽名でしょうから、その線で日本の警察に捜査を依頼しても、犯人に行き当たるのは難しいでしょう。インド大使館も現地警察も同様で、「ラージ」「ガヤ」「実家」といった断片的な情報だけで(しかもそれが本当だとは限らない)息子さんの行方を知ることは難しいと思います。
ワラにもすがる思いで僕にメールをしてくださったのはよく理解していますが、残念ながら僕が持っている情報はブログに書いてある以上のものはありませんので、いま息子さんの行方を捜す助けにはなれそうにありません。申し訳ありません。
しかし、僕が知る限りでは、この詐欺師は被害者の命を奪ったり、怪我をさせたりといったことまではしていないようです。ガヤの実家(と言っているだけで、本当にガヤなのかはわかりませんが)に仲良くなった日本人を連れて行き、そこで家族ぐるみで歓待し、すっかり安心させたところで、「実は家族が重い病気で20万円必要なんだ」といった作り話をはじめ、金をだまし取るというのが典型的な手口です。基本的には相手の善意につけ込む狡猾な手口なのです。
「助けてくれないか」という申し出を断られた場合、あるいは「警察に駆け込むぞ」などと抵抗された場合には、被害者のスマホや所持品を奪って家に軟禁するということもあるかもしれませんが、それも脅しであって、本気で暴力に訴えることはないと思われます。
詐欺グループにとっても、もし暴力に訴えればインド警察が本気で捜査することになり、それ以上詐欺行為を続けられなくなるばかりか、逮捕される危険を冒すことになるので、被害者をできるだけ穏便に(可能であれば、被害者が騙されたと思っていない状態で)解放したいはずです。
ですから僕の予想では、息子さんはしばらくすれば犯人グループと別れて、どこか他の町からAさんに連絡してくると思います。もちろん、すでにいくらかのお金を取られてしまっている可能性は高いですが、それは勉強代だと思って諦めるしかありません。
息子さんが無事かどうかわからない状況でただ待つというのは大変つらいことだと思いますが、今は息子さんが連絡してくるのを待つ以外にできることはないように思います。先ほども申し上げたように、日本の警察も、大使館も、インドの警察も、今ある情報だけでは動きようがありません。
今後、息子さんとLINEで連絡が取れたときに、息子さんがまだラージ氏に騙されているようでしたら、彼が詐欺師である可能性が高いこと、一刻も早く彼と縁を切って安全な場所に逃れなければいけないことを伝えてください。
そして、この事件が無事に解決したら、簡単でいいので、事の顛末をメールでお知らせください。僕も自分が大好きなインドで日本人旅行者が詐欺に遭うという悲しい出来事は少しでも減って欲しいと思っていますし、そのためにブログ等で情報を共有して、注意を喚起したいと思っていますから。