「新興国投資」の続編をお送りします。前回は、日本人の不動産業者として、もっとも早く現地入りしたチームが、「なぜこの広い世界の中からフィリピンのダバオを選んだのか?」ということを中心にお伝えしました。今回は、そのダバオチームが当地に根を下ろしていった手法を見ていくことにしましょう。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編)
プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネープランの実現にコミットしたマネースクールを共催。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。
※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年10月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
「よそ者」は常にぼったくられる! 現地に溶け込む新興国投資(中)
フィリピン経済を理解する上で外せない2つのキーワード
フィリピン経済を考える際に、外せない重要なキーワードが「海外送金」と「財閥」です。海外で働く出稼ぎ労働者による送金は、GDPの1割を占めるとも言われ、昨年(2016年)の送金額は過去最高を更新したものと見られています。フィリピンペソが他の東南アジア国の通貨に比べて下落幅が少ないのは、送金によって外貨準備が対外債務を超える勢いで積み上がり、通貨の信用力に一役買っているからです。
もう1つのキーワードである「財閥」は、フィリピン経済の中で隠然たる影響力を持っています。フィリピンの財閥は、大きく分けるとスペイン系と中華系の2つがあります。
スペイン系というのは、フィリピンがその昔、スペインの植民地だったことからきており、代表的な財閥はアヤラグループです。彼らは所有している土地をもとに不動産事業やショッピングモールなどを経営し、グループ企業の中には銀行や通信事業などを行なっているところもあります。中華系の財閥には商業分野で大きな力を持つSMグループなどがあります。
スペイン系財閥・アヤラランドの名を一躍高めたのが、メトロ・マニラ南部にあるマカティ市開発プロジェクトです。ダバオチームによれば、彼らは約100年という時間をかけて、もとは沼地だったマカティを開発した結果、今ではフィリピンでもっとも地価の高い地域へと変貌しました。このように、安価な土地を買って開発をかけることによって、付加価値をつける手法を「ランドバンキング」と言います。
歴史をたどってみると、実はかつての日本もそうでした。日本が1945年に終戦を迎えた時、東京は一面焼け野原で、地価も最低だったでしょう。田舎に避難している人も多い中で、現在の東部電鉄や東急が、疎開者から安く土地を購入して、現在の街を築きました。今の東京の地価は、その当時からすると、おそらく10万倍、100万倍くらいになっているのではないでしょうか。
アジアの他の国々、たとえばマレーシアやシンガポールの財閥なども、ここ数十年でそれを繰り返してきました。今、フィリピンのダバオも、そうした投資対象の1つとなっているワケです。
今回は「新興国投資」の続編をお送りします。新興国と言うと、一般的には不動産投資のことを指しますが、新興国と言えども、不動産は決して安くはありません。高い買い物となるだけに、なるべく失敗したくない、というのは多くの人が考えることです。
本特集で事例として取り上げているのが、フィリピンで今、もっとも注目されている第3の都市・ダバオです。私が運営しているマネースクールでは、この地で日本人の不動産業者として、もっとも早くダバオ入りしたチームへのインタビューに成功しました。
なぜ、彼らは日本人でありながら、現地の不動産業者として成功できたのでしょうか?私たちは、この疑問をヒモ解くことによって、この成功事例から、多くのことを学べるに違いありません。
※本特集はインタビュー形式にてお届けします(ダバオチーム:DTと表記)
1. 新興国投資の光と影
前回記事では、なぜダバオチームが「この広い世界の中からダバオを選んだのか?」ということを中心にお伝えしました。今回は、ダバオチームが日本人でありながら、当地に根を下ろしていった様子を見ていくことにしましょう。
【現地価格で土地を仕入れる究極の方法とは】
俣野:それでは、本日もよろしくお願いします。聞くところによると、ダバオチームは2012年、まだ内戦の続くミンダナオ島に乗り込んで現地に根を下ろし、自分の目・耳で本物を見分けていったとお伺いしています。どのようにされたのかを、お話しいただけますでしょうか?
DT:資産を株などで持つ場合、状況次第では紙切れになってしまうことがあります。不動産の良いところとは、自分の買ったものが残ることですよね。つまり、不動産は「もの」であって、見ることが可能です。ですから自分たちの足で歩き、繰り返し見て現地の価格を頭に入れていけば、ダマされる確率はぐんと減ります。
俣野:ダバオチームの皆さんは、まずは現地語を覚え、現地で生活をするところから始めた、とお伺いしていますが?
DT:フィリピンでは、英語が通じないところはほとんどありません。これがフィリピンにとっては大きな競争力となっており、人件費の安さと英語力の高さから、現在、世界的企業のコールセンターが集まってきています。
しかしビジネスの交渉をする際に、こちらが英語しか話せなかったりすると、相手はグルになって現地語で打ち合わせてダマしにかかったり、情報を隠したり、といったことになりがちです。私たちが、現地で知り合った日本の投資家の中には、そうやってふっかけられた値段で買わされた人が何人もいました。
俣野:ダバオにきている日本人の方で、同じように高値づかみをしている方が多い、と?
DT:ほとんどの人が、そうだと思いますよ。これは何もフィリピンに限ったことではありませんが。中国などでもよく見かけましたね。けれど当時は中国の成長がそれ以上にすごかったので、「やっぱり儲かるんだ」みたいな話で終わっていましたが。
俣野:本人はそれで「儲かった」と喜んでいる、と。
DT:私たちは買う以上、きちんとした適正価格で買いたいと考えています。それができるようになるには、やはり現地に入り込まないと難しいでしょう。
俣野:一般の方が海外投資をしたい場合は、そこまではできませんよね。その場合は?
DT:きちんと現地に入り込んで、適正価格を見極めて商売しているところからの紹介で買うのが、一番良いですよね。日本の不動産業者の中にも、海外で現地と組んで悪いことをしているところがいっぱいありますから。日本人が日本人をダマす、といった話もよく聞きますよ。
そもそも、見た物件の数が数十件レベルではダメですね。私たちは数百件、数千件レベルで見て回っていますから。そこまでやれば、現地のだいたいの価格が分かってきます。現地には不動産鑑定士などもいますから、そういうところに依頼したりもしていますし。年に数回、こちらにきて価格を調べる、くらいでは難しいかもしれません。もちろんやらないよりは、やったほうが良いでしょうが。
Next: 「不動産業ではなく金貸し業から始めたんです」その理由とは?
【現地の生情報を仕入れるのにもっとも適した商売から始める】
俣野:ダバオチームは現地に入られて、まずは現地語を覚え、相場観を身につけられた、ということですが、最初から不動産業を興されたのでしょうか?
DT:いえ、最初は金融業、つまり金貸し業から始めました。
俣野:なぜ、金貸し業を?
DT:情報収集に一番適した業種がそれだからです。どういうことかと言うと、お金を貸す時は、当然ですが担保を取りますよね? 担保の多くが土地ですから。
俣野:なるほど。最初に情報を取りにいったワケですね。
DT:はい。もともと、フィリピンはお金を貸す側がとても有利な法律国家です。詳しいことは契約によっても異なりますが、一般的には3回払わなければ、基本的に担保は没収となります。お金を借りにくる人というのは、たいていお金がなくて困っている状態できますので、モノの原価を把握しやすいワケです。
俣野:日本でも、不動産取引は相対取引ですから、相手が困っている場合は、早く売りたいから安くても応じますよね。たとえば、相続税支払いのために、不動産を処分したい時などが、まさにそうです。
ダバオチームの方々は、そうやって土地の底値をリアルで知っていた、というのは大きな強みですよね。ところで、外国人がフィリピンで金貸しをしていて、現地の人はお金を借りにくるものなのでしょうか?
DT:クリスマスの時期には、入口に人が並びましたよ。
俣野:人が並んだ…それは、新聞広告等を出したりしたのでしょうか?
DT:いえ、口コミです。フィリピンでも、クリスマスは一大行事ですので、みんなお金が必要になります。
俣野:口コミとは、金利で有利な条件を出していた、ということですか?
DT:そうですね。後はスピードです。金利とスピード融資で、人が並ぶほど集まりました。
俣野:実際に返済に窮して、土地を担保として没収したのは、どれくらいの確率でしたか?
DT:約6割くらいでしょうか。うちもあまり恨まれたくはなかったので、少しお金を上乗せし、売買契約書を交わして買い取るようにしていました。そのほうが早い、というのもありましたし。
俣野:大事な土地を担保に出してまで、お金を借りる理由は何でしょうか?
DT:ほぼ売りにきている、という感覚の人も多かったですね。「フィリピンは経済成長をしている」と言っても、実際はまだまだ貧しいですから、その日暮らしの人が大半です。場所にもよりますが、農地を売りにくる方の多くは、昔、国からの払い下げでもらった土地を売って、それでお金を手にされていた方が多いですね。
フィリピンは第二次世界大戦後、東南アジアの中でも、比較的スムーズに独立した国の1つです。ところが、既得権益の抵抗が強くて農地改革がなかなか進まず、土地を与えられた農民も、多くはそれで豊かになることはできませんでした。細切れにもらった農地で非効率な農作業をしてもお金になりにくく、農民が手放した土地を大資本が購入し、かえって貧富の差が拡大する一因となりました。
この、両極端の所得格差と、中間所得層が育ってこなかったことが、見えない障壁となって、これまでフィリピンの成長を阻んできた大きな要因の1つなのです――
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投資に「近道はない」
幸運は、“目の前にある”だけではつかめない
「ダバオの奇跡の成長」は、今始まったばかり
日本人をもっともダマしているのは“日本人”
自分は投資をする覚悟ができているかどうか?〜今週の宿題
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次回予告
次回は「新興国投資」特集の続編をお送りします!内戦の続くフィリピン・ダバオの地に乗り込んだ日本人不動産チーム。当然ながら、現地には一人の知り合いもいない状態でした。彼らは一体、この状態からどうやって、当地で商売を始めたのでしょうか?
・異国の地で、ダマされない方法ってあるの?
・お互い知らない者同士が、相手の実力を見抜く方法とは?
・海外で情報収集するコツって何?
・有力な投資先と出会うノウハウってある?ない?
「言葉もわからない」「土地勘もない」異国の地での成功法則とは!? 次回の特集も、どうぞお楽しみに!
【Vol.73】「新興国投資(中)」(10/26)目次】
〔1〕イントロ:
フィリピン経済を理解する上で外せない2つのキーワード
〔2〕本文:
「新興国投資でキャピタルゲインを得る方法」(中)
〜失敗しない新興国投資とは?〜
1. 新興国投資の光と影
◎現地価格で土地を仕入れる究極の方法とは
◎現地の生情報を仕入れるのにもっとも適した商売から始める
2. 投資に「近道はない」
◎幸運は、“目の前にある”だけではつかめない
◎「ダバオの奇跡の成長」は、今始まったばかり
3. 日本人をもっともダマしているのは“日本人”
★本日のワンポイントアドバイス☆★
☆今週の宿題★☆
「自分は投資をする覚悟ができているかどうか?」を考えてみよう
〔3〕次回予告(予定):
「新興国投資でキャピタルゲインを得る方法」(下)
〜失敗しない新興国投資とは?〜
〔4〕今週のQ&Aコーナー:
投資はやっぱり運次第?!
〔5〕編集後記:
マネースクール 全国展開に向けて始動!
〔6〕今後の特集スケジュール:
2017年11月予定
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【Vol.74】『新興国投資(中)』目次(10/26)
イントロ:フィリピン経済を理解する上で外せない2つのキーワード
「新興国投資でキャピタルゲインを得る方法」(中)〜失敗しない新興国投資とは?〜
1. 新興国投資の光と影
◎現地価格で土地を仕入れる究極の方法とは
◎現地の生情報を仕入れるのにもっとも適した商売から始める
2. 投資に「近道はない」
◎幸運は、“目の前にある”だけではつかめない
◎「ダバオの奇跡の成長」は、今始まったばかり
3. 日本人をもっともダマしているのは“日本人”
今週の宿題:自分は投資をする覚悟ができているかどうか?
今週のQ&Aコーナー:投資はやっぱり運次第?!
編集後記:マネースクール 全国展開に向けて始動!
【Vol.73】『新興国投資(上)』目次(10/19)
イントロ:好調な新興国に忍び寄るテロの脅威
「新興国投資でキャピタルゲインを得る方法」(上)〜失敗しない新興国投資とは?〜
1. 新興国の投資神話は実在するのか?
◎ダバオの今の繁栄は、現大統領のコネのおかげ?
◎新興国で20倍の儲けが出た“究極の投資術”とは?
2. 新興国投資の現実を知る
◎「土地が上がる」筋書きはあらかじめ用意されている?!
◎やはり投資初心者に海外投資は高嶺の花?
3. どんなに長い戦争も、やがて終わる
今週の宿題:自分の理想とする投資を考えてみよう
ニュースのビジネス的着眼点:ドラッカー博士は「副業・兼業時代がくる」ことを予言していた!
編集後記:ミンダナオ島より最新ニュース!
【Vol.72】『リタイヤ論(下)』目次(10/12)
イントロ:キヨサキ氏の言う「速くお金持ちになる方法」とは?
「人類未曾有の超高齢化社会の行く末とは?」(下)〜少子高齢化時代の「リタイヤ」を考える
1. 日本の未来を見据える
◎年金を当てにしてはいけない理由
◎考えられる日本の「現実的な未来」
2. 既定の未来を変える方法
◎老後破産を防ぐための4ステップ
◎具体的な一歩を踏み出す
3. 選ぶのは「あなた自身」
今週の宿題:自分の老後について思いを巡らせてみよう
今週のQ&Aコーナー:今さらだけど、「投資で成功する方法」って?
ニュースのビジネス的着眼点:ついに仮想通貨取引所が正式認可!
編集後記:私が考える「究極の老後対策」
【Vol.71】『リタイヤ論(中)』目次(10/5)
イントロ:「念願叶ってリタイヤした後」の先にあるものとは?
「人類未曾有の超高齢化社会の行く末とは?」(中)〜少子高齢化時代の「リタイヤ」を考える
1. リタイヤは「バラ色の世界ではない」
◎理想のリタイヤをするには、「計画と実行」が不可欠
◎ハメを外しすぎたツケは後に回ってくる
2. それでも早期リタイヤをしたい人は
◎まずは「可処分時間を意識する」ことから始めよう
◎目的のないリタイヤでは「路頭に迷う」
3. 早期リタイヤの近道とは「サラリーマンをやり尽くす」こと
今週の宿題:「自分の老後はいつなのか?」を考えてみよう
今週のQ&Aコーナー:投資のリスクを回避する方法って?
ニュースのビジネス的着眼点:変わりつつある「日本の常識」
編集後記:当マネースクールにも通ずる古典の名作がアンリミテッドで読み放題!
※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年10月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した全文もすぐ読めます。
『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2017年10月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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俣野成敏の『サラリーマンを「副業」にしよう』実践編
[月額550円(税込) 毎月5日・20日(年末年始を除く)]
老後2000万円問題、働き方改革、残業規制、等々。政府も会社も「自助努力で生きよ」と突き放す中、コロナ・ショックによるリストラが追い討ちをかけています。自己責任の名のもとに始まった大副業時代を生き抜く術とは?『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社)』『一流の人はなぜそこまで○○なのか?シリーズ(クロスメディア・パブリッシング)』『トップ1%のお金シリーズ(日本経済新聞出版社)』等、数々のベストセラーを世に送り出してきた著者が、満を持して『サラリーマンを「副業」にしよう(プレジデント社)』を発売。マネーとビジネスの両面から、サラリーマンを副業にするための情報をお届けします。