「桜を見る会」から浮上したジャパンライフ問題。なぜ同社元会長が安倍首相に招待されたのか、また7,000人の高齢者を食い物にしたその詐欺手法に注目が集まっています。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2019年12月23日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
裏から調査妨害の圧力? ジャパンライフと消費者庁の関係は…
ジャパンライフ問題浮上
弁護団が試算した負債総額は2,405億円、契約者は7,000人。破産手続き中のジャパンライフには、被害者に返金できる資金はない…。
被害者がこの会社を信用した根拠となっているのが、「桜を見る会」の招待状、ジャパンライフ顧問になっている官僚OBの存在です。
弁護団は被害者への返済金確保のために、同社元顧問らに顧問料の返還を求め、政治献金を受け取った議員から返還を求める交渉をしています。
顧問となっている人は官僚OBで、それぞれ、
・元内閣府官房長・永谷安賢
・元特許庁長官・中嶋誠
・元科学技術庁科学技術政策研究所長・元日本オリンピック委員会(JOC)理事・佐藤征夫
・元経済企画庁長官秘書官・松尾篤
・元朝日新聞政治部長・橘優
らで、被害者を信用させるに足る地位にいた顧問らの中の5人へ返還請求をしています。
政治献金に関しては、献金の原資は被害者の生活資金。議員は速やかに破産管財人に返還すべきだとしています。被害者の原資が政界に還流していると指摘されています。
ほかにも消費者庁の課長補佐や県警本部の幹部らが、転職や天下りをしている実態があります。
彼らも、被害者の疑心感を払拭させる材料とされて、契約の背中を押させている。つまり、権力側を信用の担保に営業がなされていたことは間違いないようです。
その会社の会長がなぜ、今年の「桜を見る会」に招待されたのか、だれが招待したのかは、問われて当然です。
勝手に入ってきたとなればセキュリティの問題も問われますし、そのリストの名簿もシュレッダーの藻屑となっているという、意味不明な状況になっています。
ジャパンライフ詐欺事件とは、いったいどんなものだったのでしょう。
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ジャパンライフ詐欺の概要は…
ジャパンライフは、100万円から600万円もする磁気治療器を購入してレンタルオーナーになることで、販売価格の6%を還元するというスキームを、高齢者に向けて信用させていました。
ターゲットは高齢者です。約7,000人が騙されました。
高齢者に収入、いつまでも若々しく、楽しい居場所を作る…これらの巧妙な表現が、高齢者のくどき文句です。
きっかけは「会いたい」「無料でエステをしてもらえる」という友人や知人からの連絡でした。
一歩、店舗に足を踏み入れると、緻密に計算された手法で巧みに被害者を誘導して、契約に向かわせ、全財産をつぎ込ませるという、詐欺のプロ中のプロでした。
それゆえ「騙されるほうが悪い」とも言えないほどの手口と巧妙さだったようです。
4回の業務停止命令
消費者庁は、ジャパンライフに4回の業務停止命令を出しています。
1回目は2016年12月16日、訪問販売・連鎖販売取引・預託取引の業務停止命令3カ月。
2回目は2017年3月16日、同じ取引で9カ月の業務停止命令でした。
2度目の業務停止命令中の2017年5月9日、レインボーブリッジが一望できる豪華なホテルで、約1,000人が集められ、大規模な勧誘が繰り広げられていました。
このホテルに連れ出しての勧誘は、家庭に訪問するわけではないが、「訪問販売」には該当するとのです。
高揚感をあおる音楽が会場に響き渡り、色とりどりのスポットライトを浴びて登場したのは、ジャパンライフの山口隆祥会長(当時)で、盛んな拍手、握手を求める人々、写真を撮ろうとする人が駆け寄り、さながら宗教団体のカリスマのようだったとのことです。
豪華演出の中で語られた言葉が、「3月(2度目の業務停止命令が出た月)1カ月の売り上げが悲願の30億円を達成しました。4月はなんと35億5,000万円…」会場からは、割れるような拍手が沸き起こったそうです。
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ジャパンライフと消費者庁との関係
消費者庁とジャパンライフとの関係は、今回の「桜を見る会」山口会長招待騒動での調査で、政治家からの圧力で、消費者庁がジャパンライフへの立ち入り検査を遅らせたという疑いが発覚しています。
ジャパンライフに関しては、2013年に国民生活センターに被害が届き始め、消費者庁も悪質性を把握、このままでは被害が甚大になると本調査を提案し、担当課長も「被害が広がらないように立ち入り検査をやるべきだ」と強い姿勢を見せていたとのことです。
しかし、2014年に消費者庁の人事異動で担当課長が交替すると、新しい課長は「立ち入り検査には違和感がある。立ち入り検査を行うほどの違反事実があるわけでなく」などと発言しているとのことです。
立ち入り検査が遅れずに行われていたら、被害者の数を減らすことができたのではないかとの指摘もあります。
ジャパンライフから政治家へのお中元が届けられたという話もあり、「あいうえお」順に送付リストがあり、1番目の「あ」は麻生太郎財務大臣、2番目の「あ」は安倍晋三首相となっているという話もあります。
消費者庁から、ジャパンライフへの天下りもあるとのことです。
食い物にされるお年寄り
有名人のショーに大抽選会、無料エステに説明会ごとの弁当、東京観光、さらに、仲良くなった社員が自宅にやってきて、買い物や病院に薬を取りに行くときに車に乗せて連れて行ってくれるとか…。
みんな預けてジャパンライフの利子で暮らせばいいよ、普通預金は100万円以下に…などと言われ、郵便局や銀行、農協の定期預金をすべて解約した人もいたそうです。
ジャパンライフの創業は1975年、今回問題となっているのは、元会長の山口隆祥氏です。
ジャパンライフは、羽毛布団や磁気治療器などの商材を変えながら、高配当をうたって、主に高齢者をターゲットにマルチ商法を展開してきました。
Next: ジャパンライフは法的にグレー? マルチ商法とねずみ講
マルチ商法とねずみ講
「マルチ商法」とは、ある販売組織の加入者が、別の消費者に商品を売って組織に加入させてマージンを受け取り、さらにその消費者が、別の消費者に商品を売って組織に加入させてマージンを受け取り、さらにその消費者が…というようなことを次々に行って、組織をピラミッド式に拡大していく商法です。
ジャパンライフでも、人を紹介して契約させたら、紹介者にも、契約額に応じて収入が入るようになっています。
法律で禁止されている「ねずみ講」と違い、商品を媒介させており、適切な組織運営を行えば事業を維持することが可能ですが、勧誘の時に紹介される一部の成功話のように誰でも簡単に利益を得られるわけではなく、本当に儲かるのは組織の上部にいる一部の人間だけです。
商売経験の乏しい主婦や青少年が販売員となり、売れない商品の在庫を大量に抱えることになったり、友人や知人を無理やり勧誘したために人間関係が悪化するなど問題も起こりやすいようです。
ねずみ講は「違法行為」
「ねずみ講」は無限連鎖講と呼ばれ、一般的に製品が介在しない、金銭の配当のみを目的とした組織を指します。
自分がお金を払って組織会員となり、2名を勧誘し、お金を払わせて組織のメンバーになると、自分の子組織となります。これを次々と増やすことで、出費した金額を超える収入を得ることができる仕組みとなっています。
無限に広がる無限連鎖で「ピラミッド・スキーム」とも言われ、これは明確に違法行為となっています。
加入者を3人ずつ増やしていく方法だと、10世代目で59,049人、20世代で35億人もの加入者が集まる計算になるそうです。ワクワクしますね。
同じような仕組みで、商品を介することを前面に出しているのがネットワークビジネスで、商品を買うという行為があるので、ねずみ講ではないと主張しています。
Next: 「桜を見る会」招待は当然? ジャパンライフと仲良しの政治家は山ほどいる…
ジャパンライフと政治家の関係
ジャパンライフと政治家との関係は、挙げればきりがないほどあります。
ジャパンライフのヘリコプターで選挙区入りした、新自由クラブの山口敏夫労働大臣(当時)、もちろん政治献金もしっかりと受けとっています。
ジャパンライフ発行誌には、見開きページに李香蘭の名で活躍した女優出身の山口淑子参議員が登場。
先日なくなった中曽根康弘元首相にも、政治献金が渡っています。
みんなの党の柿沢未途衆議員(当時)にも献金されています。
2015年の春、安倍晋三内閣総理大臣から山口会長に「桜を見る会」のご招待状が届きました…この文句を宣伝チラシに書いて配布されました。招待状のコピー付きでです。
いま話題になっている人物が、この山口隆祥元会長(77歳)なのです…。
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・ローン担保証券(CLO)が来年のテーマになるのかも/ジャパンライフ問題が浮上(12/23)
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『らぽーる・マガジン』(2019年12月23日号)より一部抜粋
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