IMF(国際通貨基金)の世界経済見通し、1月分の改定では10月の見通しから成長率が下方修正されています。日本は成長率が年々下がる見込みです。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
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日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
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世界経済見通し「下方修正」
IMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)の世界経済見通し、1月分の改定では10月の見通しから成長率が下方修正されています。インドの下方修正が大きいようです
※参考:世界経済見通し 2020年1月改訂見直し – 国際通貨基金
世界の成長率、2019年は2.9%、今年2020年は3.3%、2021年は3.4%とのことです。10月時点からは今年が0.1%分、来年が0.2%分下方修正されています。
特にインドは、今年1.2%分、来年0.9%分、下方修正されています。それでも成長率は2019年から順番に4.8%、5.8%、6.5%といった形で加速すると見込まれています。
ちなみに、このインドの下方修正は金融面でのストレス、平たく言えばおカネの貸し借りが当初想定程には活発ではなかった、そんなことが背景として挙げられています。
また日本の成長率は2019年から順番に1.0%、0.7%、0.5%。10月時点からは2020年の見通しが0.2%分、こちらは上方修正されています。減速見通しには違いないですけど、増税に伴う景気減速緩和策等が勘案されています。
アメリカ、お金の蛇口を開いて米株最高値更新へ
ところで、このIMF見通しには「世界金融環境指数(数値は平均からの標準偏差)」という以下の資料が添付されています。
出典:国際通貨基金
この表にはアメリカ・ユーロ圏・中国・その他の新興市場国(ブラジル・インドなど)の指数が折れ線グラフにて示されています。
表をみると、アメリカがグラフの一番下でウネウネしています。「平均からの標準偏差」が一番下、ということは、以前よりも相対的にアメリカがおカネの蛇口を開いたとも言えそうです。その恩恵が米株の最高値更新にも現れているのかと。
このグラフは2016年分からありますが、当初は各地域とも平均よりも高い数値、おカネの蛇口は締め気味という値でした。中国はほぼ平均付近をフラフラ。金融面での景気刺激が無かったことが示されています。
トランプ大統領は事ある毎に「Fedは何で利下げしない」と文句を言っていますが、その反駁材料としてIMFのデータは使えそうです。というか、そんな意味合いが実際にあるのではないでしょうか。日本のデータにしてもMOF(財務省)との繋がりが少なからずあるでしょうし。
IMFの見通し自体、当たっていたかどうかなんて二の次。地球規模の成長率なんて正確に出せる訳ありません。各国・地域から得るデータからしてアテにならないのですから。
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借金と国の予算を使っても経済成長できない日本
むしろ、趨勢(すうせい)的な方向性をみることが大切かと。
ざっと言えば、「世界経済は減速気味、でも3%。日本は0.5%、てことは存在感がさらに低下。インドは振れが大きいものの、成長率は高め。アメリカも減速、でも金融の支えアリ。中国は成長率の数値は従前から疑問符が付いているものの、減速が継続することは確からしい」。こんなところでしょうか。
それにしても、日本とイタリアの成長率の低さが目に付きます。どちらも借金が多い割に、借金が経済成長へと有効に活用されていない印象です。
働き方改革なんて言う前に、国の予算の使い道をちゃんとしてもらわないと駄目かと。
とは言うものの、昨日の施政方針演説からはその気配すらなく。まぁこれは何処の党が政権を取っても変わらないのでしょうけど。
てことで、日本よりおカネを注ぎ込む国はたくさんある、そんなことをIMF見通しは教えてくれます。
今回のまとめ
・IMFの世界経済成長率見通し、インドを中心に下方修正
・日本は成長率が年々下がる見込み
・アメリカの金融環境、トランプ大統領のFed批判とは反対に「最も緩和的」と
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『高梨彰『しん・古今東西』』(2020年1月21日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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