検察官 「●●たちからまた連絡があったらどうしますか」
被告人 「チャッキョ(着信拒否の略か)します」
検察官 「(携帯電話の)番号を変えようとは思わないんですか」
普通は、番号を変えるとか、今までの携帯電話は解約するとか言うもんだ。てか有能な弁護人は──被告人が応じればだが──すでに解約してるとの書証を取調べ請求するもんだ。ところが…。
被告人 「ずっと使ってたケータイなんで、番号は気に入ってるんで変えたくはないです」
裁判官 「よろしいですか」
と検察官の尋問を打ち切り、裁判官が尋ねた。
裁判官 「今ふり返って、あそこでこうしとけばよかったというのは、どの辺りですかね」
うむ、良い質問だ。被告人は即座に答えた、棒読みで(笑)。
被告人 「あたしは、夜の仕事ヤメて、資格を取ってインターネット系の仕事に就こうとしたことがあったんですけど、そのタイミングでキャバクラの引き抜きがあって、そっち(六本木か)へ行ってしまって、そのときに夜をヤメていれば…」
インターネット系のイラストレーターの仕事をやろうと、夜の仕事は1カ月間ヤメ、勉強したんだという。すごいよね~! ただ、覚せい剤でしゃきっとして頑張ったというのが…。
裁判官 「あなたなりに考えて1人で決めてやったことが裏目…だったこともあるんだろうけど…」
被告人 「はい」
裁判官 「やっぱりね、1人で何でも決めないで、周りにね、言ってくれる人は周りにいましたか」
被告人 「いっしょに覚せい剤やってた人たちは、全員ヤメていて…」
おいおい、すごいことを言ったね!
被告人 「面会に来てくれたとき、自分がヤメたときに○○○(被告人の名)はヤッてて、でも覚せい剤は人に言われてヤメられるもんじゃないから、なかなか言えなかったって…心配してくれてたんだなって思ったら、なんか自分は1人じゃなかったし…あたしが覚せい剤ヤメたら、そういう昼間の友だちとも付き合いできるし、うれしいと思います」
裁判官 「今は、二度としないと…5年、10年、その気持ち持って…そのためにはどうしたらいいのか、これきっかけによく考えたらいいですね?」
被告人 「はい、分かりました」
求刑は懲役3年。最終陳述は…。
被告人 「私が安易に人を紹介してしまったせいで…すごい迷惑かけてしまい…必ず絶対に少しずつでも返済していくので、許してほしいです」
これも棒読み口調なのだった。
判決は11月18日(水)11時30分と決め、11時07分閉廷。
覚せい剤だけなら鉄板で執行猶予だ。詐欺は、被害金額的には実刑だが、幇助にとどまってるし…。どうすんだろ、俺は、懲役3年、執行猶予5年、付(ふ)保護観察が適当かと思う。見届けねば!
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『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』
著者/今井亮一
交通違反専門のジャーナリストとして雑誌、書籍、新聞、ラジオ、テレビ等にコメント&執筆。ほぼ毎日裁判所へ通い、空いた時間に警察庁、警視庁、東京地検などで行政文書の開示請求。週に4回届く詳細な裁判傍聴記は、「もしも」の時に役立つこと請け合いです。しかも月額108円!
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