今週のドル円はレンジ幅はそこまでではないものの、チョッピーな値動きが続いています。やはり米国の金利や株価が不安定になっているので、その影響が大きいでしょう。したがって、今週の雇用統計はダイレクトに為替が動くことを想定するのではなく、金利や株価にどういった影響があるかを踏まえて考えていきたいと思います。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)
想定レートは1ドル=112.30~113.30円、今夜のトレード戦略は?
現実となり始めた逆イールド!そのメカニズムとは?
先週はパウエルFRB議長が現在の金利水準は中立を僅かに下回っていると発言したことで、来年の利上げ回数への見通しが大きく後退。米長期金利(10年債利回り)が不安定化し、株式市場も大荒れとなりました。
さらに今週に入ると、ついに景気後退(リセッション)のサインとされる逆イールドが発生したことで、市場はかなり神経質となっています。
今回は3年債利回りと5年債利回りの金利が逆転したことが話題となりましたが、通常は2年債利回りと10年債利回りを比較します。この2年債と10年債の金利が逆転すると、24ヶ月以内に必ずリセッションに陥っているため、懸念が強まっているというわけです。
通常の場合、短期債は償還期限(元本が返ってくるまでの期間)が短いですから、当然ですが金利は低くなります。2年と考えると少し長く感じられるかもしれませんが、仮に償還期限が1ヶ月で利回りが高い商品があれば、みんなこぞって買うでしょう。たった1ヶ月待つだけで、お金が増えるわけですから、余っているお金があればガンガン投資しますよね。
逆に償還期限が長い商品だと、利回りが良くても手が出しにくいですよね。急にお金が必要になることもありますから、資金拘束を考えれば、通常は短期よりも長期の方が金利が高くなるのが当然と言えます。これが短期金利が低くて、長期金利が高くなるメカニズムです。
では、なぜ金利の逆転現象である逆イールドが発生するかというと、そこには中央銀行の政策が大きく関わってきます。
中央銀行が政策金利(市中銀行にお金を貸し出したり、銀行間取引の際の基準となる金利)を引き上げると、この政策金利という誘導目標に従って短期金利は大きく影響を受けることになります。
一方、長期金利は償還期限が長いことから、中央銀行の決定する政策金利の影響を受けにくく、市場参加者の見通しが反映されやすくなります。
つまり、現状は米国の中央銀行の役割を果たすFRB(連邦準備制度理事会)がポンポンと金利を上げて短期金利が上昇する一方で、もしかしたら将来は不景気になるかもしれないから長期国債を買っておこうという市場の見方が反映され、長期国債の価格は上昇し金利が低下しているというわけです。
Next: 逆イールドの発生を懸念した、今回の注目ポイントとは…
市場を安心させる内容になることが望ましい
これが今の市場の状況ですから、今回の雇用統計の理想的な結果を考えると、目先は利上げしにくく、かつ米国の景気は底堅く持続性を伴っているという内容でしょう。
したがって、賃金インフレは硬直性が高いとされることから、FRBは重く受け止める傾向が強いため、今回に限っては平均時給が上振れてもプラスにはならない可能性がありますので、ご注意ください。
その理由は先ほども書いた通りで、インフレ抑制を目的としてFRBが利上げすることで短期金利が上昇し、逆イールドが発生しやすくなるからです。平均時給が強めに出ると、嫌でも利上げペースの加速が想定されます。
今の市場は逆イールド問題に非常に神経質になっていますから、決してプラスに作用しないパターンになることが考えられるというわけです。
というわけで、平均時給が予想並レベルの結果、非農業部門雇用者数は引き続きしっかりというのが、今の市場にとって理想的な数字でしょう。
繰り返しになりますが、今回に限っては平均時給が上振れたからといって必ずしもプラスに作用しないということを覚えておいていただければと思います。
先行指標は弱め!年末商戦へ向けて雇用増が期待されますが…
今回の先行指標はイマイチですね。ただ、前回も良くなかったですが、蓋を開けてみれば良好な結果でしたから、過度に気にすることもないでしょう。
先行指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)
全体的にやや悪化していますが、極端に悪い数字があるわけではないので、まずまずの結果が期待されていることでしょう。事前予想値についても、非農業部門雇用者数、平均時給ともに先行指標の割には、やや強気なのかなと。この辺は年末商戦へ向けての雇用増が期待されているのかもしれません。
市場の期待値としては、ハードルはやや高めな印象ですね。平均時給はともかくとして、雇用者数が大きく下振れるようだと、これまでとは違ってネガティブに受け止める可能性がありますから、警戒しておきましょう。
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想定レートは1ドル=112.30~113.30円!戻り売りで対応したい
不安定だった株式市場が、金利の動きが怪しくなったことで、より不安定化していますから、今後も荒れた値動きが続く可能性が高いのかなと。
また、ドル円相場としては下値試しが続いていますから、まずは戻り売りを試したいところでしょう。
ドル円日足チャート
昨日は瞬間的に89日移動平均線(112.378円)を割り込む場面がありましたが、やはり一目均衡表の雲(112.464~112.670円)と合わせて強いサポート帯を形成しています。
これらを割り込んで、昨日の安値である112.234円を更新すると下抜けて大きく下落する可能性がありますから、警戒しておきましょう。目立った抵抗もないため、10月安値の111円前半ぐらいまであっさり落ちていくことが考えられます。
一方で、上値に関しては21日移動平均線(113.276円)が最大の目標。ここを回復できれば、再びモミ合いという認識が強まり、下値不安は払拭されやすいと言えます。
もっとも、これを超えて上昇していくためには何らかの材料が必要でしょうし、神経戦になりつつある現在の市況を踏まえると、なかなか厳しいように思います。
なので、今夜の戦略としては、113円台に頭を出してくるのであれば、ちょっと叩いて打診売りというトレードを描いています。21日線を超えれば損切りぐらいの割り切ったトレードで十分でしょう。
やはり現状はまだまだ下値を警戒する段階にあると考えていますので、買いからというよりは戻り売りで臨む予定です。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2018年12月7日)
※太字はMONEY VOICE編集部による
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