春節前と3月中旬の2度、世界三大投資家のひとりでシンガポール在住のジム・ロジャーズ氏にインタビューを行い、『ジム・ロジャーズ 大予測:激変する世界の見方』(著:ジム・ロジャーズ/翻訳:花輪陽子, アレックス・南レッドヘッド/刊:東洋経済新報社)を緊急出版することになりました。コロナ危機により変わり果てた世界経済を天才投資家はどのように見ているのか。そのエッセンスを紹介します。(『花輪陽子のシンガポール富裕層の教え 海外投資&起業実践編』花輪陽子)
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外資系投資銀行を経てFPに。2015年からシンガポールに移住。ジム・ロジャーズ著『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』(講談社+α新書)をインタビュー監修。『シンガポールで見た日本の未来理想図』(講談社+α新書)『夫婦で貯める1億円!』(ダイヤモンド社)など著書多数。「ホンマでっか!?TV」「有吉ゼミ」などテレビ出演や講演経験も多数。
世界が不況に突入することは避けられない
「世界が不況に突入することは、もはや避けられない。最大の理由は世界中の国が経済を停止させ、国境を閉じてしまったからだ」。インタビューの中でジム・ロジャーズ氏はこう述べました。
日本でも関東や大阪などで緊急事態制限が発令され、多くの人が自宅待機を余儀なくされていますが、私やロジャーズ氏が住むシンガポールではより厳格なロックダウンとなっています。
集合住宅の共用設備の多くも封鎖され、必要最低限の食料を買い出しに行く以外は部屋から一歩も出られない程です。買い物に行く際にも、社会的距離を確保できないと、罰則があります。
image by:原隆夫
中国ではロックダウンが解除され始めていますが、それでも国境を以前と同じように開くには相当な時間がかかるでしょう。
世界の株式市場は連日乱高下をくり返し、ニューヨーク株式市場では3月16日に、1日で2,997ドル下落という記録的暴落に見舞われました。
NYダウ 日足(SBI証券提供)
実体経済の落ち込みも深刻で、米セントルイス地区連銀ブラード総裁は、アメリカの4〜6月期のGDPはマイナス50%、失業率は30%に達する可能性もあると発信しています。
ロジャーズ氏はインタビューの中で、コロナ危機については、過剰に反応しすぎているとしながらも、人々は実際に「恐怖」に支配されてしまっており、世界経済はパニック的な大混乱に陥っているのは事実だと述べていました。
Next: 「次の金融崩壊が私の人生で最も大きなものになる。おそらく株価の下落は――
次の金融崩壊が私の人生で最も大きなものになる
「おそらく、株価の値下がりは今後も続く。50%、60、70%、いやそれ以上だろう。実体経済の落ち込みは、いずれ金融機関の破綻をもたらし金融システム不安を引き起こす。いつとは断言できないが、それは必ず起こる」。
アメリカの景気成長が10年以上続きましたが、これは過去でも最も長い連続記録でした。特に下落直前の2〜3ヶ月に至っては一直線に上昇していました。そのタイミングでFRBは金利を引き下げました。そこから新型肺炎からの経済急停止によって、株価は「I」の字に急落しました。これほど早く、大きく相場が下げたことは初めての経験だと言います。
ロジャーズ氏は次の金融危機が過去最悪になる理由として、世界中の国が非常に大きな債務を抱えている問題を指摘しています。リーマン・ショックの時は中国がキャッシュを抱えており、それによって危機を脱出することができました。しかし、その中国も今では大きな債務を抱えています。
アメリカの中銀のバランスシートは、ここ12年で500%も急拡大しています。この数字は歴史上聞いたことがない莫大なものです。日本でも日銀が無制限のお金を刷って、ETFやREITなどを買い増し、債務をさらに増加しています。
「中央銀行も無限に債務を増やし続けることはできない。いつの日か終わりが来る。ある日突然、相場参加者のモメントが変わるときが必ずやって来る。その局面では、もはや誰も世界経済を救うことはできない。次の危機はそうした最悪の危機になると見ている」。
航空会社、シェール関連企業の破綻は避けられない
ロジャーズ氏は、破綻の連鎖は小さなところから起きると言います。
リーマン・ショックの際にはアイスランドやアイルランドが破綻しましたが、そのことを知っている人はあまり多くありませんでした。ノーザンロックやベアー・スターンズショックが起き、リーマンが破綻した際には日本のメディアでも大注目をされました。
現在はインドの銀行などで債務不履行となっています。また、米中堅シェール企業ホワイティング・ペトロリアムが破綻しました。米デルタ航空はジャンク級に格下げされました(フィッチ)。航空会社や以前からクレジットリスクが指摘されていたシェール関連企業の破綻は避けられそうにありません。
こうした小さい綻びはいずれ大きな問題に繋がると言います。
現在は連銀が大量のお金を刷って、問題をもみ消していますが、金融危機はもう始まりかけているのです。
そして、連鎖して世界中に飛び火が来ると言います。
Next: 世界の中央銀行は、なりふり構わず様々な対策を打っている。それが次の――
中央銀行の無制限の緩和政策によって、当面はラリーが続くかもしれない
「世界の中央銀行は、なりふり構わずいろいろな対策を打っている。それが次のバブルを生む可能性がゼロとは言えない。事実、リーマン・ショックの際、「100年に一度の経済危機」と言われながら、その後、わずか数年で、それを上回る規模の新たな金融バブルがつくられることになった」。
ロジャーズ氏は続けます。
「このような一連の誤った政策が功奏して、大きなラリー(再上昇相場)が起こるかもしれない。FRBだけでなく、世界各国の中央銀行が揃って金融緩和に踏み込んでいることも、それを後押しすることになる。世界の中央銀行は、足並みを揃え、これまで世界市場最も大量のお金を刷ってきたにもかかわらず、今回の騒動でさらなる量的緩和を発表してさらに大量のお金をバラまこうとしている」。
空前の危機にあって、個人投資家はどのように行動するべきでしょうか。
皆が、長期投資をして、株式インデックスを買えば、老後資産は安泰といった相場は過去のものになってしまったのかもしれません。本メルマガでは最新の海外投資や海外の金融機関情報などを読者の皆様に限定してお伝えします。
新刊情報:ジム・ロジャーズ著『大予測:激変する世界の見方』
この記事の著者・花輪陽子さんがインタビュー・監修した書籍『ジム・ロジャーズ 大予測:激変する世界の見方』(著:ジム・ロジャーズ/翻訳:花輪陽子, アレックス・南レッドヘッド/刊:東洋経済新報社)が出版されました!ぜひお手にとってご覧ください。
『ジム・ロジャーズ 大予測:激変する世界の見方』
著:ジム・ロジャーズ/翻訳:花輪陽子, アレックス・南レッドヘッド/刊:東洋経済新報社
image by:原隆夫
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年5月1日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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