今回は、2017年の日経平均株価の有力と考えられるシナリオをご紹介します。また、今年最後のメルマガなので、個人的に考えている長期的な投資戦略についても書いておきます。(『少額投資家のための売買戦略』伊藤智洋)
プロフィール:伊藤智洋(いとうとしひろ)
証券会社、商品先物調査会社のテクニカルアナリストを経て、1996年に投資情報サービス設立。株や商品先物への投資活動を通じて、テクニカル分析の有効性についての記事を執筆。MS-DOS時代からの徹底したデータ分析により、さまざまな投資対象の値動きの本質を暴く。『チャートの救急箱』(投資レーダー社)、『FX・株・先物チャートの新法則[パワートレンド編]』(東洋経済新報社)など著書多数。
※本記事は有料メルマガ『少額投資家のための売買戦略』2016年12月25日号を一部抜粋・再構成したものです。只今、2016年9月までのバックナンバーも無料公開中!ご興味を持たれた方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。
1~2月に調整一巡後、2万1000円前後が最初のターゲットになる?
日経平均の年間を通じた値動きの特徴
その年のシナリオは、年間の変動幅を目安に強弱の両方を考えます。年初には、強弱のそれぞれに何通りかのシナリオが想定できます。そのシナリオは、上げるべき時期、下げるべき時期を経過するごとに絞られてゆきます。
来年の展開を考えてゆく前に、まず、日経平均の1年間を通じた値動きの特徴を書いておきます。
日経平均株価は、1月から4月、展開次第で6月頃までの期間に上げ傾向があります。弱気パターンの年は、1月、4月、または6月に年間の最高値をつけて、下げの流れへ入る傾向があります。
5月は、強弱のどちらの年であっても、上値を抑えられやすい傾向があります。上昇の流れを継続すると見られるときでも、値幅の伴った調整が入ると想定できる場面があります。3~6月の期間のどこかで値幅の伴った調整があると推測するなら、4月に戻り高値をつけて、5月へ向けていったん下値を試す動きを考えます。
1月~4月は上昇しやすい時期ですが、4か月連続して上昇するわけではありません。1月、2月に上昇するなら、3月、4月が上値重く推移して、1月、2月に上値重く推移するなら、3月、4月に上昇するという流れになります。
前年後半に十分価格が上昇しているときは、1月、2月に調整を経過することを想定しておく必要があります。2016年は、15年末に有力だと見ていた予想と異なり、1月、2月に価格が大幅に下落しました。極端に弱い動きとなりましたが、それでも、そのまま下げの流れを継続せず、2月の安値が押し目になって、4月まで上値を試す流れができています。
6月から10月頃までは、上値を抑えられやすい時期になります。9月は、5月と同様にはっきりとした下げ傾向があります。下げ幅が大きくなる場合、下値を掘り下げるのは、7~9月になります。
Next: 2017年の有力シナリオ~調整の値幅は?いつ高値を更新してくる?
日経平均株価 2017年の有力シナリオ
以上の傾向から2017年の展開を予想した場合、現時点での有力な候補は以下のようになります。
2016年12月23日までの動きを考慮すると、2017年は、16年年末までの上げを1月、2月に修正する動きになると考えられます。
修正幅の目安は、11月1日~9日までと同程度の値幅(1362円幅)が考えられます。
本メルマガは2016年12月25日に執筆しており、12月27日の値位置の展開を確認できなければ、どこからの修正になるかがはっきりしませんが、12月21日の高値19582円、または1月上旬につける高値のどちらかがピークになって、いったん1362円幅程度の修正場面になると考えられます。
2月から3月にかけて、修正が終了した後、再上昇を開始して、21000円前後を目指す流れへ入ります。その後、4月から10月までの期間のどこか(4月から9月、6月から9月など)で、値幅の伴った下げ場面へ入ると考えられます。このときの下げは、円高によって現れる動きだと考えられます。
9月から10月期間で押し目をつけた後、再度上昇の流れへ入り、2017年の最高値を目指す動きになると考えられます。このときの上昇は、2012年末から2013年にかけてあらわれた動きに近いものになる可能性があります。
図: 2017年の日経平均株価の現時点での有力なシナリオ
12月27日のNYダウの動きを確認すると、2017年前半の2つのシナリオを1つに絞ることができると考えています。今回は、更新した内容を後日、特別配信する予定です。
※編注:上記の更新された内容は2016年12月29日21:30に有料メルマガで特別配信されています。
Next: 私が考える長期的な投資戦略~第2のニクソン・ショックに備える
大局観は「長期的な強いインフレ」
今回は、今年最後のメルマガ(2016年12月25日号)なので、個人的に考えている、長期的な投資戦略について書いておきます。1年以上先のことは妄想なので、そのつもりで読んでください。
これから先のポイントは、長期的に強いインフレ局面へ入り、それを継続するということです。
強いインフレと書くと、すぐに「じゃあ来年からハイパーインフレになるのか」と、極端に解釈する方がいるのですが、そうではありません。
2016年、FRBは4回の利上げを予定していましたが、結局、年末に一度だけしか実行できませんでした。中国経済の低迷や、イギリスの国民投票でのEUの混乱、不安定な中東情勢など、世界全体に不安要因が多く、利上げする環境にならなかったためです。そのような状況で、来年からハイパーインフレになるわけがありません。
イエレン議長が、FOMC後の記者会見で「来年3回の利上げを予定している」と述べたように、2017年以降、緩やかな金利の上昇局面へ入ってゆくと考えられます。詳細な経緯は後述しますが、2017年以降、数年間の緩やかなインフレを経過し、その後、インフレ圧力が強まる中で、それをコントロールできなくなり、陰謀論者が大好きな高インフレ局面へ入ると見ています。
その流れの中で、国内の値幅で利益を得るための有効な投資先は、
「2017~18年 日本株、買い」
「2017~20年 商品先物市場、買い、特に金」
「2020年以降 中央銀行の発行する仮想通貨、買い」
(極端に書くと、もっと先に紙のお金が紙くずになることを想定して事前に交換しておくという感じです)
を考えています。
図: 米国10年債利回りの推移
図は、1960年から2012年頃までの米国10年債利回りの推移を示したグラフです。終戦後の混乱期を経て、ブレトン・ウッズ体制(ドルを基軸通貨として、1オンス35ドルと定め(金本位制)、ドルと各国通貨を固定した交換比率とした)のもと、安定した為替相場の中で、米国経済は、1950~60年代、高い経済成長、低失業率を実現しました。
図の米国債利回りは、60年から65年くらいまでは、4%以下から少しずつ4%を超える程度まで上げている程度の動きになっています。米国は、60年半ば頃には完全雇用の状態へ入り、緩やかなインフレ傾向へ入っていました。
そのような状況では、財政の出動を抑えて、お金の循環を抑制してゆく必要がありますが、65年以降、ベトナム戦争へ深入りしてゆく過程で、軍事費を大幅に拡大しました。その結果、65年以降、徐々にインフレ傾向が強くなり、図1のグラフでは、65年から70年までの期間で、米国10年債利回りが4%から8%まで上昇しています。
軍事費の拡大だけが理由ではありませんが、結局、この時期の財政拡大でドルの供給量が増加し、金との交換を米国が保証できない状況へ陥ったため、71年にニクソン大統領が金とドルとの交換停止を発表し、73年に主要国が変動相場制へ移行し、ブレトン・ウッズ体制が完全に崩壊します。
米国経済を語るメルマガではないので、端折りますが、世界的に高いインフレ率が定着してしまう状況の中で、73年の第四次中東戦争、78年のイラン革命をきっかけにした原油高騰がインフレを加速させた結果、米国10年債利回りは、81年に15%を超えてしまいます。
Next: 第2のニクソン・ショックは「米ドルから仮想通貨への転換」だ
第2のニクソン・ショックは「米ドルから仮想通貨への転換」だ
再度、図の米国10年債利回りの推移を見て下さい。
1980年代前半から、米国債利回りは、長期の下降局面へ入っています。これは、軍事的、経済的な覇権国である米国の国債に対し、1980年前半以降、安定的な需要があったことを示しています。2016年の反転を経て、いよいよこの長期の下降局面が変化し、1960年から1980年に示した上昇局面へ入ってゆくと見ています。
2016年は、1965年頃の時期だという見方です。
前回は、強いインフレ局面へ入ったとき、それまでの金を中心とした通貨体制が崩壊しました。次に高インフレ局面が訪れるとするなら、それは、ドルを基軸通貨とした紙のお金の体制が崩壊してゆく過程であらわれると見ています。
各国の中央銀行が仮想通貨を発行、国際取引の法整備が進む?
以前に紹介した通り、リーマンショック後の金融緩和によって、FRBは通貨供給量を過去に例を見ないほど、急激に増加させました。このつけが、これから徐々にインフレという形であらわれてきます(詳細は以前のメルマガ参照)。
それに加えて、来年以降、トランプ次期大統領が、積極的な財政出動を行います。そうなる理由が違っていても、状況は1965年以降と近くなっていると推測できます。
この見方が正しければ――
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『『少額投資家のための売買戦略』』(2016年12月25日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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値動きには理由があります。一般的に言われているような確率や、需給の変化を見るだけでは、先のことなどわかりません。確率論や、統計データ分析をやりつくし、挫折を味わった経験があるからこそ、理解できた値動きの本質を書いてゆきます。