今回の解答
FX取引で、何回か細かく損切りをした後、新規で建てた買いポジションに利が乗ってきました。今度こそ、うまく上昇トレンドに乗れたようです。あなたは、せっかくのチャンスを生かすため、「買い乗せ」で利益を最大化したいと考えました。その際に正しい方針はどれでしょうか?
(1)利の乗った状態から、価格の上昇にあわせ1~2回の買い乗せを行い、早めに目標額までポジションを膨らませる
1つは、「損失の値幅を小さく、利益の値幅を大きく」するように努めること。そしてもう1つは、「損失のポジションを小さく、利益のポジションを大きく」するように努めることです。
そこで今回の正解は(1)の「利の乗った状態から、価格の上昇にあわせ1~2回の買い乗せを行い、早めに目標額までポジションを膨らませる」となります。
では、(2)「一度に大きく買い乗せすると損益分岐点が跳ね上がるため、価格トレンドを見極めつつ、細かく細かく買い乗せする」は、どうして正解ではないのでしょうか?
ここで、(1)と(2)の優劣を比較するために、現在価格90のものが99まで上げる過程で、
(A)93と96で、2回だけ買い乗せする
(B)91から98まで、8回に分けて買い乗せする
の2パターンの取引を検討し、それぞれのリスクとリターンを見てみましょう。
初期条件として、(A)は価格90の時点でポジションサイズ3をとり、それより慎重な(B)は価格90の時点でポジションサイズ1をとります。買い乗せにより最終的に目指すポジションサイズは同一の9です。
93と96で2回買い乗せ | 91から98まで8回買い乗せ | |||||
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現在価格 | 平均コスト | ポジサイズ | 含み益 | 平均コスト | ポジサイズ | 含み益 |
90 | 90 | 3 | 0 | 90 | 1 | 0 |
91 | 90 | 3 | 3 | 90.5 | 2 | 1 |
92 | 90 | 3 | 6 | 91 | 3 | 3 |
93 | 91.5 | 6 | 9 | 91.5 | 4 | 6 |
94 | 91.5 | 6 | 15 | 92 | 5 | 10 |
95 | 91.5 | 6 | 21 | 92.5 | 6 | 15 |
96 | 93 | 9 | 27 | 93 | 7 | 21 |
97 | 93 | 9 | 36 | 93.5 | 8 | 28 |
98 | 93 | 9 | 45 | 94 | 9 | 36 |
99 | 93 | 9 | 54 | 94 | 9 | 45 |
ご覧のように、買い乗せをすることで、当初のポジションのままでいるより、格段に収益が増加します。
また、この(A)と(B)の2つを比較すると、まとまった金額で買い乗せする(A)の方が、小刻みな買い乗せよりも、一貫してコストも、ポジションも、そして、収益も有利なことが分かります。
(B)が(A)より有利なのは、価格が91に到達する前に、90以下に下落した場合だけで、いったん91に到達した時点で、(B)のコストは上がってしまい、(A)より有利ではなくなるのです。
では、解答(3)の「大きくポジションをとる場合ほど、下落局面で買い下がって平均コストを下げるべきで、上昇中の買い乗せは行ってはならない」は、どうでしょう?
(3)の方針では、今回の問題のように相場が上げている間は、上げている分だけが利益につながります。つまり、当初に(1)のようなポジションを取った場合には、99の時点で、+27になりますが、(2)のような場合だと、+9のままです。いずれの場合でも、買い乗せした場合に比べて見劣りします。
また、下げた場合にポジションを膨らませるのですから、上の表を逆に読めば、このようなナンピン買いにより、どれだけ損失が大きくなるかが分かるというものです。
もちろん、相場が回復すれば損益も改善しますが、例えば、81の時点からの回復過程で、新規のポジションで(1)や(2)のように収益を狙ってくる人たちに比べると、著しく不利な戦いになることは避けられません。
このようなナンピン買いの是非については、以下を参照して下さい。
https://www.mag2.com/p/money/4045
相場はメリハリです。下げると思って買い増しするのは論外ですが、上げると思っている時には、少なくとも使える資金の3分の1は注ぎ込みたいものです。
正解は、(1)の「利の乗った状態から、価格の上昇にあわせ1~2回の買い乗せを行い、早めに目標額までポジションを膨らませる」となります。
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