西側から東側へ一方通行で流れる金現物
ゴールドの現物地金の流れを語るのは簡単で、西側から東側へのほぼ一方通行のみと言える。昨年だけは少しドイツで需要が伸びたが、それを除けば、すべてアジアへと流れている。主に中国へ、インドにも、そして少しだが中東にも流れている。
当社のビジネスで見れば、9割が東へ、残る1割が欧米市場へ流れている。再度言えば現在は投資家はまだまだ金融市場を信用し、安心している。だから金価格は安いのだろう。
公式発表よりも多くの金準備を保有する中国
中国の統計データはどうにも霧に包まれており信じられない。中国は金生産で世界一であり、海外からの輸入実績でも世界一だ。しかしそのゴールドが一体どこに行っているのかがよく見えてこないのだ。
中国人民銀行の金準備に関しては、私個人としては、公表保有量よりも実際はもっと保有していると想像している。
中国の新規格である99.99%純度の1キロ地金はすでに国際的な基準にもなっている。世界各国の中央銀行が保有している金地金は99.95%の400オンスのものだ。金ETF保有の金地金もこの400オンス地金だ。
しかしこれは宝飾品需要には大きすぎる。そこで中国の1kg地金需要に合せて、99.99%の1キロ地金に再精錬するのが現在の我々の仕事だ。
とくに重要な証言
我々金精錬業者のところに、いったいどこからゴールドがやって来るかと言えば、まずはロンドンからだ。金ETFの金地金が出てきている。

金ETFからの金地金流出を示すグラフ
さらにCOMEX、NYMEXからも出てきている。そして当然、世界の金鉱山からも新産金として出てくる。
他にリサイクル回収もあるが、これは価格が安いと出てこないものだ。金価格が1900ドルの時は古い金宝飾品が豊富にあったが、1150ドルとなるとリサイクル回収は出てこない。現在はリサイクル回収からの供給はもうない。
スクラップから回収したゴールドは今のところ非常に少ない量である。金鉱山からの新産金は、過去の探査開発、拡張計画がほとんど消えたので、減る方向にあるのは間違いない。現在までは毎年1.5%から2.5%程度は生産量が増えてきたかもしれないが、数年先には生産量が減ると思う。
数年後に金価格が上昇しても、すぐに増産して新産金量が増えるとは思えない。と言うのは巨額の投資費用が必要になるからだ。小さな鉱山でも何十億円規模だからだ。
金価格が高値になり安定したと感じるようにならない限り、投資家は資金を金鉱山向けに提供する気持ちにはならないものだ。また、探査開発するような魅力的な場所は地政学的に問題があるところが多いのも問題なのだ。
ということはこの先、金価格が上がり、現物需要が増加した場合、供給が間に合わない状態になるだろう。今後、スクラップが十分に出てくるかどうかはまったく分からない。
そのため私個人としては金に強気だし、金は供給不足になる可能性が大きく、その結果としての価格に対する衝撃は大きいものになるだろう。だからこそペーパーゴールドではなく現物が必要となるのだ。
もしゴールドと名前の付くものを購入するのであれば注意が必要である。「現金による清算」というような文言がある場合は止めたほうがよい。
古臭いようでも、貴金属に関しては古臭いほうがよく、現物で持つべきなのだ。今後、近いうちに市場は非常に興味深い状況になると私は思っている。
※太字はMONEY VOICE編集部による