旅行会社社員Aさんが作った一目瞭然の図解報告書
この図は、旅行会社の社員Aさんが上司から「旅行企画を考えてほしい」と指示され、その報告書をつくったものです。
もちろん、いきなりこの図ができたわけではありません。報告書になるまでに、Aさんは大枠を詰めるための相談を何度も上司としています。
Aさんは簡単なグラフと図を見せながら、マーケットの設定について上司と相談しました。
「日本の社会は今後も少子高齢化が進むといわれています。高齢化社会になれば、生涯学習というテーマが出てくると思います。それに、少子化が進めば、一人の子供に対してかける教育費用が増えてくるでしょう。今回、学習活動というテーマで企画をまとめて提言したいと思いますが、いかがでしょうか」
「少子高齢化社会に注目してその方向に進んでいけば、わが社も大きく間違うことはないだろう。その方向で進めてくれ」
こうした合意ができて初めて、Aさんは実際の企画に入れます。上司の方も、安心して見ていられます。
その後も、Aさんは上司への小さな報告を重ねながら、出来上がったのがこの図です。これは具体的な企画内容と同時に、そのコンセプトもわかるような報告書になっています。
最大のメリットは誰もが一目で全体像がわかること
Aさんは、「旅というのは非日常の世界をお客様に提供することだ」と考え、非日常と7つの有望な分野の交わったところにマーケットが存在すると仮定して企画を練りました。
この7つの分野は、財団法人余暇開発センター(現:公益財団法人日本生産性本部)が、今後急成長する余暇活動としてあげたものです。
このうちの学習活動のところに重点を置き、学習活動に寄せていく形で企画を実現するのがよいというのがAさんの考えです。たとえば、山・海・空のスポーツのところにある「小型飛行機免許取得の旅」や、創作活動のところにある「小説を書く旅」や、けいこごとのところにある「資格取得の旅」なども、学習活動的な旅です。
こうした分野の企画を重点的に実行していけば、少子高齢化での生き残りが図れるのではないかという企画になっています。
この図は、コンセプトが非常に明確です。報告を受けた上司は、文章でコンセプトを説明され、箇条書きで企画案を説明されるよりも、全体の構造がはっきりとわかります。図のなかのマルが重なったところに注目し、マルのなかでは特に「学習活動」に重点を置いていることが示されているからです。
あとは、上司の裁量次第です。他のメンバーにもこの図に企画案を書き込ませて、もっとアイデアを集めていくこともできます。この図を持ってさらに上の上司に見せ、「この方向で進めたいのですが」と言って了解を取り付けることもできるでしょう。社長に報告するときにも、この図を見せるだけで十分です。
社長から平社員までの誰もが、見ただけで全体像や構造がわかるというのが「図解報告書」の最大のメリットです。子会社や外部の人に説明するときも、「図解報告書」があればコミュニケーションミスが減っていくのではないでしょうか。
『久恒啓一メールマガジン 図解達人への道』(2015年10月8日、15日、22日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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文章と箇条書きを中心とするコミュニケーションは、組織の生産性を3割ほどもダウンさせているのではないか。こういった観点から私は過去20年にわたって、「図解コミュニケーション」という考え方を提唱して活動を続けてまいりました。図解コミュニケーションの核心は、理解力や伝達力の向上以上に「考える力」の獲得にあります。企画力、構想力、思考力を鍛えることが個人にとっても組織にとっても喫緊の課題です。受講者との交流を大事にしながら、図解コミュニケーションの達人を数多く輩出していく場にしたいと念願しています。