おしどり贈与を使ったほうが、税金が高くなる可能性も
他にも注意点が存在します。それは、小規模宅地の特例。
小規模宅地の特例とは、死亡した方が所有する自宅の土地部分を相続する際に、最大で評価額を80%減額出来る制度です。
この特例を使うことが出来れば、1億円の土地であっても、2,000万円の評価になるわけです。
小規模宅地の特例では、死亡した方が所有する自宅を誰が相続するのかによって適用させることができるかどうかが変わってくるのですが、配偶者が相続する場合には、無条件で適用させることが出来るのです。
つまり、配偶者が自宅を相続することになれば、無条件で8割引となるのです。
このように、配偶者が相続人となる場合には、税制面での優遇措置が数多く設けられているので、わざわざおしどり贈与を使わなくても、将来相続税が発生する可能性が低いのです。
そしておしどり贈与で最も気を付けなければならないのは、贈与税は無税であってもその他の税金が課税されるということ。
不動産を取得する際には、不動産取得税と登録免許税を支払わなければなりませんよね。
当然、相続によって不動産を取得する際にも、このような税金が課税されるわけですが、贈与によって取得した不動産に適用される税率はかなり高く設定されているのです。
相続・贈与によって、不動産を取得する際に課税される不動産取得税と登録免許税の税率を比較してみると、相続によって不動産を取得した場合には、不動産取得税はゼロ、登録免許税は0.4%。
対して、贈与によって不動産を取得した場合には、不動産取得税は3%、登録免許税は2%。
つまり、贈与税を一銭も支払わずに自宅の贈与が出来たとしても、その他の税金が大きく課税されることになり、相続によって不動産を取得した場合にはかからない不動産取得税までも納税しなければならないのです。
おしどり贈与は、住宅の購入資金に充てると効果的
また、おしどり贈与によって取得した不動産に関しては、特別受益、つまり贈与を受けた相続人と受けていない相続人の間に生まれる不公平を是正するための措置の対象になってしまうというのもデメリットの一つですが、相続法改正により特別受益の対象外となりましたので、正式に法律が施行された後であればこの点については気にする必要はないでしょう。
さておしどり贈与の制度概要だけをみると、メリットしかないような気になってしまいますが、今回解説したように、デメリットの方が多い制度であるかもしれませんね。
ただし、おしどり贈与では自宅の贈与だけでなく、住宅の購入資金に充てるための金銭の贈与であっても同様に2,110万円までは無税です。
住宅の購入資金のための贈与であれば、不動産取得税や登録免許税などの心配はないので、最大限に活用させることができるでしょう。
夫婦で長年住んでいた自宅を手放し、新たに自宅を購入するというのは少数派であるかもしれませんが、万が一このような選択肢を考えているのであれば、おしどり贈与を使ってみるのも良いかもしれないですね。
さて、生前贈与は相続税対策に繋がるというのは、決して間違えた情報ではありません。
しかし、特例を用いて贈与を行う際には、その制度にはどんな盲点が隠されているのかまで把握したうえで、行動に移さなければ後に後悔することになるかもしれません。
残された家族が税負担の面で困らないようにするためにも、制度概要を隅々まで把握することを心掛けましょう。
『FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』(2019年1月30日・2月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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