21兆円分の株式が8兆円で買える
では、ソフトバンクグループは売りなのかと言うと、それはまた別問題です。
開示資料を見ると、バリュー株投資家にとって魅力的な文言が並びます。その最たるものが、以下のスライドでしょう。

出典:ソフトバンクグループ 2020年3月期第1四半期決算説明資料
本来の価値が21兆円あり、一方で時価総額は11兆円となっています。(直近では8兆円にまで下がっています。)これはまさに、「500円で買える1,000円札」という、バリュー株投資の理念をそのまま体現したものなのです。
これを見せられると、どうしても買いたいという気持ちになってしまいます。
ここで言う株主価値とは、保有する株式の時価です。
アリババ11.3兆円、ソフトバンク(携帯会社)4.7兆円などが並びます。ここから、「純負債」とする5兆円を引いたものが、「株主価値」の21兆円です。

出典:ソフトバンクグループ 2020年3月期第1四半期決算説明資料
その中で、ビジョン・ファンドは3.5兆円と、必ずしも大きくありません。バリューで見た時には、ビジョン・ファンドの動向はそこまで関係がないと考えています。
したがって、ビジョン・ファンドでいくら失敗したとしても、ソフトバンクの「価値」はそう簡単に揺るがないのです。
有利子負債17兆円は過大か?
ソフトバンクは有利子負債が多いと言われます。
確かに連結決算上は17兆円もあるのですが、そのうちスプリントとソフトバンク(携帯会社)で約10兆円です。これらの会社は自社内で安定したキャッシュ・フローを生むので、親会社の資金状態への影響はほとんどありません。
ちなみに、スプリントはTモバイルと合併し、ソフトバンクの連結対象から外れる予定です。
少なくとも、ボーダフォンを買ったときのように、多額の借金をして綱渡りの資金繰りを行っていた時からすると明らかに余裕があります。
金利も当時より大幅に低く、低金利環境を最大限に活かして拡大を続けているのです。
ここでファンドではなく本体で無理な投資をしなければ、財務の問題は必ずしも大きくないと考えます(この点、投資家はWeWorkへの出資が本体からだったことを気にしているのです。)
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