バフェットがお気に入り銘柄まで手放し始めた
大前:バフェット氏が今回、売却したのは、手持ちのアメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空、サウスウエスト航空の4社です。2月にデルタ航空を買い増しした時には、新型コロナウイルスの影響がここまで大きくなることを、予想していなかったことがわかります。
航空株は、バフェット氏のお気に入り銘柄でしたから、株主総会で質問が集中したのも無理はないでしょう。しかし、冷静に考えれば、バフェット氏がこのような行動に出るのは当然だと思います。
やはり、キーワードはソーシャル・ディスタンスです。以後、飛行機はスペースを空けて搭乗することが必須の情勢ですから、これまでの3分の1ほどの人員しか運べなくなります。その状態でフル稼働になったとしても、収益がこれまでの3分の1になれば、経営的にかなり厳しくなります。
これまでにも航空業界では、破綻や合併がしばしば起きてきましたが、今後はインフラ産業として、国が関与をしていかなければ立ちいかなくなるところが多いでしょう。当然、航空機のメーカーや、部品メーカーなどにも影響が及びます。
航空業界の収益率に、もう一つ大きく影響してくるのが原油価格です。
本来であれば現在の原油安はプラスに働くはずですが、航空業界は、どこも先物市場で原油を調達しています。こうすることによって、価格変動の影響を受けにくくするはずが、かえって高い価格で買い付けを行うこととなりました。
結果的に、今回の原油安のメリットを、彼らはまったく享受できていません。これらは、すべてチケットの価格に跳ね返ってきます。チケット価格が上昇すれば、さらに利用者が少なくなる、という悪循環が続くことになります。まず、LCC(格安航空会社)から撤退が相次ぐでしょう。
こうした状況を考え合わせると、バフェット氏が「航空会社の株は、実は一番持っていてはいけない株だったんじゃないか?」という判断をされたのも、ムリはないと思います。
もちろん今後、見通しが変われば、買い戻す可能性も十分、ありますが。
ゴールドマン・サックスの株まで売却
個人的には、バフェット氏がゴールドマン・サックスの株を売ったことに注目しています。両者の関係は、2008年のリーマン・ショックの際に、氏が同社に救いの手を差し伸べたことから始まりました。
今回の売却は、氏が「今後、金融業界の収益は低迷する」と判断してのことと推測されます。各国が行っているマイナス金利政策などの影響で、「低金利になることは避けられない。銀行の収益は圧迫される」と考えてのことでしょう。
俣野:これまで磐石と思われていた業界も、再編を迫られることになるのは間違いないですね。
2. 表面化するアメリカと中国の対立
俣野:ところで、ここへきて、中国とアメリカの対立が抜き差しならないものになってきていますね。
5月22日、中国では、新型コロナウイルスによって遅れていた全人代が開幕。始まる前日の21日夜、中国政府が香港国家安全法を採択する旨を発表し、世界を震撼させました。
香港は昨年、逃亡犯条例の改正に大勢の市民が反対し、大規模なデモに発展。業を煮やした中国政府は今回、香港基本法18条の例外規定に、香港国家安全法を追加する形で、本法の制定を採択しました。早ければ、今夏より施行する見通しです。
香港返還時に「50年は堅持する」と言っていた一国二制度を、このタイミングで中国が反故にするというのは、やはり新型コロナウイルスが関係しているのでしょうか。
大前:通常、全人代は3月に行われますが、コロナで延期されていたので今になった、と見ることもできます。しかし中国の内情を見てみると――
表面化するアメリカと中国の対立
国家の利権は、キレイごとでは通らない
編集後記:「今、やったほうがいいことって何ですか?」
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『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2020年6月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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