■日本動物高度医療センター<6039>の中長期成長戦略
1. 市場環境
動物高度医療の市場環境は良好である。ペットの医療は飼い主の住居に近い「かかりつけの動物病院」で診療(一次診療)を受けるのが一般的だが、飼い主の間に「ペットにも人間と同じように高度な医療を受けさせたい」として、高度医療(二次診療)に対するニーズが一段と高まっているためだ。
同社資料によると、人口動態や住環境の変化で犬猫飼育頭数は減少傾向だったが、昨今の猫人気がけん引して犬猫飼育頭数も増加に転じている。また同資料によると、ペットの家族化に伴って一世帯当たり動物病院支出額は増加基調であり、動物病院の市場規模も拡大基調である。さらにペット保険の市場規模は2ケタ成長が続いているが、日本のペット保険加入率は10%程度にとどまり、欧米諸国の30~40%に比べて低いため、市場拡大余地が大きいと予想されている。
2. 動物医療業界の総合的企業を目指す
こうした事業環境を背景として、中期成長戦略には拠点と連携病院数の拡大、人材の確保・育成、新規事業の拡大を掲げ、動物医療業界の総合的企業を目指すとしている。
拠点と連携病院数の拡大に関しては、全国主要都市への施設展開、学会発表やセミナー開催などの学術活動を推進する。新拠点については2018年1月開業の東京病院に続いて、2021年秋頃に大阪病院(仮称)の開業を予定している。大阪病院の開業で西日本での連携病院比率を引き上げ、その後は東名阪の拠点を核として、地方都市を含めて連携病院数や紹介件数の増加を加速させる方針だ。
人材の確保・育成に関しては、大学・専門学校・各種団体との関係強化や人脈形成に尽力し、採用活動を積極的に実施する。また卒後臨床研修制度を通じた獣医師育成も推進して拠点拡大に対応する。さらに愛玩動物看護師法の施行に伴って動物看護師の国家資格取得を促進し、動物看護師活用による獣医師の負担軽減や業務の効率化・生産性向上を推進する。
新規事業はM&Aも活用して事業領域を拡大するとともに、診療以外の領域で患者動物・飼い主・一次診療施設をサポートし、利便性向上につながる新規事業に挑戦する方針だ。2019年2月リリースしたペット向けIoT健康管理ツール「プラスサイクル」は、スマートフォンアプリと連動してペットの日常の活動量を測定(ペットの「元気」を可視化)し、重症化する前にペットの異常を早期発見することが可能となる「ペット・テック」ツールである。現在は動物病院経由での拡販を目指して普及活動段階だが、複数の大手企業と協業を交渉中である。
動物高度医療の市場拡大余地は大きく、高度医療サービスを提供できる総合動物病院の強みを生かしながら、積極的な事業展開で中長期的に成長が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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