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孫正義のArm売却額4.2兆円は妥当か?買った側のNVIDIA目線で分析=シバタナオキ

買収後の懸念その1:成長率の違い

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次に、Arm買収後の懸念点について、整理しておきましょう。2つの懸念点があり、1つ目は両社の「成長率の違い」です。

先述のように、Armの成長率は直近3年ほどは低迷しています。一方で、NVIDIAはYoYで+50%と未だに高い成長率を維持しています。

Armの数字が合算されることで、今後NVIDIAの成長率は低下することが予想され、Armがお荷物になる可能性あります。

買収後の懸念その2:Armの中立性がなくなることでの顧客離脱

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もう1つの懸念点は、Armの強みである中立性がなくなることによる顧客の離脱です。

冒頭のNVIDIAとArmのビジネスの違いの章でも説明したように、Armは半導体チップの設計をライセンスとして販売するIPビジネスを行っています。

そのようなビジネスモデルの下、Armによる設計は中国を含めた世界中の企業で使われており、特にスマホ向けCPUのシェア95%以上と言われています。

Armがここまで半導体チップの領域でシェアを伸ばすことができた背景には、その「中立性」がありました。どこかの企業グループに属していない中立的な企業であるからこそ、競合し合うような半導体メーカー各社もArmの設計を共通で採用していたわけです。

ただ、今回の買収によりArmがNVIDIA配下になると、その状況は一変します。「Armの顧客かつNVIDIAの競合メーカー」という企業は、ArmのIPの利用を継続することに対して、検討を余儀なくされるでしょう。

実際に、QualcommやAMDといったNVIDIAの競合半導体メーカーのほとんどは、ArmのIPを利用しています。

また、ファーウェイを中心とした中国企業もArmの重要な顧客ですが、昨今の米中対立の激化を鑑みると、米国政府がArmに中国企業との取引を中止するよう求めることも考えられます。

このように、Armが米国の半導体メーカーであるNVIDIAグループ入りすることで、中立性が損なわれ、競合半導体メーカー及び中国企業の顧客が離脱していくことが懸念されています。

Arm・NVIDIA陣営としては、NVIDIAの技術をArmのIPポートフォリオに追加することでArmのビジネスを強化すると共に、IPとチップの双方を必要に応じて販売できることを強みにしていくようですが、実際にこれが機能するのかは、注視していく必要があるでしょう。

Next: デメリットの方が上回る?相乗効果は期待できるのか

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