平均時給への期待が空振りに終わる可能性も
前置きが長々なりましたが、いよいよ本題です。今回の雇用統計においても、重視されるのはインフレ動向の鍵を握る平均時給ということになります。
この平均時給については、今年1月から18州で最低賃金が引き上げられたことなどを背景に、前月比+0.3%・前年同月比+2.6%という、まずまず堅調な数字が見込まれています。
ただ、気をつけないければならない点として、昨年も1月から今年を上回る20州以上で平均時給が引き上げられたにも関わらず、平均時給が予想を下回ったことが挙げられます。その後、1年間を通して非常に緩慢な伸びが続いたことも忘れてはなりません。
ちなみに、賃金がなかなか伸びていかない理由としては、構造上の変化やロボット化が挙げられています。構造上の変化としては、低賃金労働を中心に労働そのもののシェアが拡大し、失業率の押し下げに寄与しているものの、同時に賃金が上がらない要因になっているといった指摘がありました。
また、離職率が上がらないことから、より高い賃金の仕事を見つけられずにいるのではという指摘もあります。求人件数は過去最大であることも合わせて考えると、それなりのスキルを持った労働者は仕事が選び放題な反面、低スキルの労働者は低賃金労働からなかなか抜け出せないという状況がありそうです。
それから、最低賃金が2~3年で急速に引き上げられたため、人件費削減のためのロボット化、オートメーション化を推し進めているという話はよく聞きます。あのウォルマートも人員削減を行なったと報じられたばかりですからね。
というわけで、今回の雇用統計はもちろんのこと、今後の賃金動向についても、あまり楽観的な見方を持ちすぎず、冷静に見極めていただければと思います。
ISM製造業の下振れが賃金に影響する可能性も
先行指標や事前予想値については、以下のようになっています。

先行指標の結果(数値はいずれも速報値)
まず、良い面から見ていくと、新規失業保険申請件数が一段と減少したことでしょう。30万件未満だと労働市場が力強いとされており、現在は152週連続で30万件を下回っています。これは1970年以来の記録ということで、労働市場の引き締まりは明らかと言えるでしょう。
一方で、気がかりなのはISMの発表した製造業の景況感指数で、雇用に関する部分が落ち込んで2017年5月以来の低水準となったことでしょう。50が境目の指数だけに、それほど問題のある数字ではありませんが、一般に製造業は賃金が高めですから、この下振れが賃金の伸びに影響してくる可能性に警戒したいところではあります。
今回、1月分の事前予想値は非農業部門雇用者数が+18.0万人など、しっかりした数字が期待されているものの、注目されている平均時給については、それほど強気になれないのかなといったところです。