中国を「注視する」と明言したFRB、利上げ期待の巻き戻しに要注意
そして、これまで以上に中国経済の動きを注意深く見ていくとしました。その中国がすぐに安定するめどは立っていません。
このフィッシャー副議長の講演や、FRB幹部の一連のコメントは、「9月の利上げも排除しないが、いま一つ自信がない」というもので、米国の短期金融市場(翌日物金利スワップ)では、9月の利上げ可能性を35%、12月の可能性を77%と、市場混乱時にそれぞれ25%、50%まで低下したところからはやや高まりましたが、9月はまだ十分に織り込んでいません。
つまり、数週間前に比べると、米国や世界経済には新たな不安があらわれたわけで、それだけ為替にはドル安、株式市場には株安、債券市場には金利低下要因となります。
まず為替ですが、ドル円が121円台まで円安に戻ってきましたが、ここから先はどちらに転んでも円安にはなりにくく、むしろ円高になる可能性が高まります。9月の利上げは無いと思っているところへ、FRBがまさかの利上げに出れば、新興市場、とりわけ中国にショックを与え、世界市場にリスク・オフが広がり、円高が進むと見られます。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)
逆に9月に利上げを見送れば12月もわかりません。中国経済が落ち着かなければ、中国株や人民元の動きを含めて、いつどんな波風が立つかわからないからです。
これまで中国の動きは意図的に無視してきたFRBが、今回は「注視する」と明言してしまったので、市場もこれを意識するためです。
中国不安の再燃は、利上げ期待の巻き戻しを起こす可能性があります。
どちらに転んでも為替は円高に向かいやすくなります。シカゴIMMの通貨先物では、円のネット売り越しが依然として9万枚以上あります。9月、10月は、中国経済の動きや米国の利上げ判断で、市場の期待が大きく動く余地があります。
これで大きな円ショートが短期間で巻き戻されると、それだけでもドル円は110円ないしはそれ以下に下げる可能性もあります。
為替が円高になれば、その面から日本株には下げ圧力がかかります。日本政府は株価の動きに一喜一憂しないと言いますが、株安、円高が進めば、日銀が追加緩和に動く可能性が高まります。
それでも、まさかの追加緩和は株高、円安に効きますが、追い込まれた緩和では効果が限られます。ここからの円売り、株買いはくれぐれも慎重に。
『マンさんの経済あらかると』(2015年8月31日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。