トルコ危機よりも深刻な「テスラの経営難」
さて、テスラのイーロン・マスク氏が先日「(1株当たり)420ドルでテスラを非公開にできないか考えている。資金調達の目途はついている」と唐突にツイートしたことは、「トルコ・ショック」が走るまでは大いにマーケットの衆目を集めていました。
この「資金調達の目途はついている」というのは、マスク氏の「はったり」です。目途なんかまったくついていません。
目下のところ、テスラは、サウジアラビアの王様をはじめ、様々な投資銀行など、MBOの資金提供者「探し」に奔走しているところです。
MBOには総額700億ドルもの膨大な資金が必要なようです。ちなみにソフトバンクの孫氏はテスラには資金提供しないようです。
イーロン・マスク氏は確かに稀に見る天才です。マスク氏には熱烈な支持者があたかも信者のごとく集まってきていました。しかし、若い頃のスティーブ・ジョブズのように、マスク氏もまた夢想家特有の癇癪持ちです。
テスラモーターズにはかねてより(およそ1年前あたりかな?)資金ショートのうわさが絶えませんでした。
そういった「悪い噂」を、マスク氏は「スペースX(火星移住計画)」などの大風呂敷でなんとか誤魔化していました。信じられないことですが、この「スペースX」の大風呂敷で、支持者たちはますますマスク氏を熱烈に支持していきます。
歴史上で稀に見る天才が、LTCMの天才たちと同様に、稀代のトリックスターへと変化していった瞬間でした…。
ハイテクブーム終焉への序章か
テスラの経営がすでに悪化していたからこそ、この夏、「空売り筋」はテスラ株を大量に空売りしていたのです。
が、その「空売り筋」に癇癪を起したマスク氏は、「株式の非公開化」という「一か八かの(ほとんど不可能な)賭け」に出てしまったのです。
近日中にも、マスク氏と投資銀行団との間で、「テスラの非公開化」のための膨大な資金が調達可能かどうか、「初めての話し合い」が持たれるようです。
(万が一、そして、その可能性は高いのですが)今週中にも、テスラが銀行団との合意に失敗して「非公開化」が夢物語に終われば、テスラの経営難が露呈し、破綻の危機に直面することになります。
テスラの経営難が露呈すれば、テスラ株は暴落、マーケットは「第二・第三のテスラ探し」を始めることでしょう。アメリカのハイイールド債市場も無事では済まないでしょう。
テスラ経営難の露呈で、イケイケでやってきたアメリカのハイテクブームも、とうとう陰り始めるかもしれません。