ずさんな建築審査、なぜデータ改ざんを見抜けなかったのか?
もうひとつの問題は建築審査です。なぜデータ改ざんが見抜けなかったのでしょう。
この建築審査に関してですが、従来は、地方公共団体の建築主事のみが建築確認、検査事務を行なっていましたが、建築物件の数が増え、役所としても人手不足となり、当時の橋本龍太郎内閣が建築基準法を改正し、それまで地方公共団体の建築主事のみが行なってきた建築確認、検査事務を、民間の指定確認検査機関(同法第77条の18 – 第77条の35)を創設することにより、株式会社を含む民間機関に開放することになりました。
この民間会社が行った審査を地方公共団体は信用してきたわけです。今回の事に関しては、横浜市側にしても「被害者」の立場ということなのでしょうか。
人手不足で、手抜き工事が見抜けず、十分な検査が行われていない事態を改善するために、審査を民間企業に開放したとする最初の説明でしたが、一方、営利企業に公正な確認、検査ができるのかという懸念もあり、確認・検査業務は、行政機関が責任を持って実施すべきだとの意見もありました。
でも、行政機関がしても民間がしても、欠陥住宅の数はなくなることはなく、ある一定程度の数はあるようです。役人も民間も手を抜く人は抜くようです。
姉歯事件を覚えていますか。ヒューザーの小島社長をテレビで見かけましたよね。ヒューザーの小島社長の国会喚問の前日、ライブドア本社に強制捜査が入りましたね。あのときです。
耐震偽装という言葉、姉歯設計士による経済設計という言葉が飛び交っていました。経済優先、つまり販売価格を下げることが優先、コストを下げることが、安全よりも何よりも優先されたわけです。
その偽装を民間審査会社は見抜けなかったのです。今回も同じです。
建設業界は縦割りで、下請けがたくさんいます。下請けに行くほど利益幅は薄まります。どうしても経済設計ではないですが、経済的な建築をしようとします。手抜き、欠陥が生まれやすい土壌があるといえます。
それに工期短縮です。下請け会社は予算を抑えられ工期は守らされるという状況に追い込まれているようです。
そして今は東北震災復興や東京五輪に向けての建設ラッシュで、建築業界は慢性の人手不足です。円安による材料費高騰もあり、欠陥住宅や手抜き工事、施工ミスが生まれる土壌が整いすぎているような気がします。
大手が取り扱ったマンションも、建売住宅も同じ事情かと思います。フォルクスワーゲン社の問題といい、企業の信頼はどこへ行ったのでしょうね…。
『らぽーる・マガジン』(2015年10月19日号)より一部抜粋
※チャートと太字はMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
らぽーる・マガジン
[月額330円(税込) 毎週月曜日]
投資を始めたばかりの人、これから投資を始める人に向けての情報誌です。ある程度投資を経験している人にも、今後の投資判断の材料としていただく情報を書いています。今足元で起きている出来事を、報道情報を深く読み解き、また、実際に投資を行っている人からの現場の情報をもとに、分かりやすく解説していきます。投資が「わかりやすい」情報誌です。「らぽーる」は、臨床心理用語で、クライアントとの「架け橋」を意味します。情報を通じて皆様との架け橋が「らぽーる・マガジン」です。