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世界的な株高、本当の背景~これは「緩和バンザイ」相場ではない=米CFA協会認定証券アナリスト・馬渕治好

「緩和期待」だけではない、世界的株高の背景

しかしECBの追加緩和見通し(さらには、これで米国は年内利上げできないとか、日銀が今月追加緩和するとか)を持ちだして、それで世界株価の上昇や他の市場動向を全て説明するのは当たっていないと考えます。

というのは、通貨市場においては、ECBの追加緩和観測の高まりで、ユーロなどの欧州通貨が、対米ドルでも対円でも売られるのは理解できるのですが、それだけであれば米ドルの対円相場は無風のはずです。

しかし実際には、米ドル高・円安が進みました。その解釈としては、欧州での追加緩和期待の他に、米ドルを押し上げかつ世界の株価を押し上げた、何か大きい要因があると考えるべきです。

実はそうした大きい要因として、このところ発表されている日米の企業収益が予想よりは良かった、という点を指摘したいと思います。

まず米国については、7~9月期は前年比で減益だとの、悲観的な予想が広がりました。それに対して、たとえば先週決算および収益見通しを発表した、マクドナルド、イーベイ、ダウ・ケミカル、テキサスインスツルメンツ、アマゾン、マイクロソフトなどの収益が予想より良いとして、そうした企業の株価が上がり、それは米国株式市況全般を大いに引き上げました。

米国の企業収益が予想よりは良く、米国株価が上昇したとなれば、米ドルが対円で上昇するのは自然なことです。

また日本でも、中国景気悪化の悪影響が、日本の企業収益を悪化させる、という事前の空気が広がっていました。ところが安川電機など、中国の悪影響が大きく表れると懸念されていた企業が過去最高益を更新したため、事前に引き下げていた期待より実態は良い、中国の日本への悪影響を懸念し過ぎたとして、同社以外の輸出関連企業の株価も上昇しました。

また、中国関連ということでは、10/21(水)に発表された9月の外国人訪日客数が、前年比46.7%と引き続き高い伸びであった(中国からの来日客に限ると99.6%増)ことが、市場に安心感を与えた点も無視できません。

このように、日米ともに、あらかじめ低くしてしまったハードル(高めてしまった懸念)に比べ、実態はそれほど悪くはなかった、ということが、株価上昇の主因であったのではないでしょうか。

この他の材料としては、まず為替絡みでは、米財務省の半期為替報告書が、10/19(月)に公表されました。マスコミの取り扱いが少ないように感じられますが、日本については「金融政策や(それが招く円安による)輸出主導の経済成長に、過度に頼ることを避けるべきだ」と記されており、米国が引き続き米ドル高・円安に対する警戒感を持っていることが示されました。

また10/21(水)に発表された、日本の9月の貿易統計では、輸出数量が前年比で36.9%減少しており、円安による輸出数量増のメリットが全くないことが、引き続き明確になっています。

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