強めの回復相場を客観評価すると…
さて、相場は強めの回復基調が続いた結果、日経平均は11月20日には1万9879円と2万円に接近、理論株価とのかい離率はプラス1.7%となりました。ここまでくると今度は通常変動の上限が目に入ってきます。
下のグラフはこうした相場判断を分かりやすく捉えるために日経平均と通常の変動範囲、相場反転の判断基準となる変動限界を併せて示したグラフです。
ここも上と同じく2014年1月から直近までと今年7月以降の拡大版を併せて載せています。

日経平均と変動範囲―2014.1.6~2015.11.20―

日経平均と変動範囲(拡大版)―2015.7.1~2015.11.20―
日経平均は紺色の線で示しています。
緑色の線は通常の変動範囲を示し、この間であれば日経平均は妥当な相場水準にあるということで、あえて売り買いに動くまでもないと評価できる領域です。
赤色の線は相場変動の限界を示します。上・下のどちらでもここから外れた場合は相場は経験的に反転する傾向が強く、すなわち売買の出動に備える臨戦態勢の領域となることが示されます。
そして緑色と赤色の線の間は相場の進み方次第で臨戦態勢に入る警戒領域と言えます。
グラフから、8月の半ばまで日経平均は緑色の通常変動の上側、警戒領域の上限に張り付いていたのが8月下旬に力尽きた形で下落、そのまま一気に9月29日の底値まで変動の下限である赤線を突き抜けました。
その後これまでの実経験と同様に反転、上昇に転じて通常の変動範囲に戻ったことが分かります。
2万435円より上は「売りの警戒領域」
現在の通常変動の上側は2万435円です。
日経平均はあと600円ほどで通常変動の上限に達することになり、これを超すと売りの警戒領域に足を踏み入れることになります。
足元、一時の派手な動きから相場の動きは落ち着いてきていますが、市場はこうした相場の位置づけを肌で感じているのかもしれません。
今後とも、予想収益の振れと為替の動向に留意しつつ、理論株価を相場判断の材料としてご利用いただければ幸いです。
筆者プロフィール:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。
『投資の視点』(2015年11月24日号)より一部抜粋
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