市場の頭打ちは近い?経営者の思惑を読む
それでは、これだけ好調な業界でなぜ再編が必要なのでしょうか。
一般的に、市場の成長が止まり、業界内の競争圧力が高まった時に再編機運が高まります。あれだけ好調だったコンビニも、いつの間にかセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの3社に集約されました。スーパーも、イオン系とそれ以外という状況です。
業界内での再編が進めば、取り残された企業は苦しい状況になります。売っているものの差別化が難しい以上、規模は正義だからです。規模があれば、プライベートブランドの販売や物流コスト、商品購買力で有利な立場に立つことができます。
さらには、エリア内で店舗数が過剰になった場合、グループ内であればジリ貧になる前に機動的に再編することができます。これが、寡占企業が取る行動です。
ドラッグストアの経営者たちはすでに市場の頭打ちを見越した行動を取っていると考えられます。うがった見方をすれば、彼らはドラッグストア業界の頭打ちは近いと見ているということです。
独立独歩のマツキヨ、攻めのスギ、都会育ちのココカラ
マツモトキヨシは、この業界の先駆けとして有名です。1932年に創業し、一貫して薬の販売を続けてきました。他社が合従連衡に走る中、小規模な買収を除いては独立独歩の経営を続けてきました。その姿勢は、売上高が業界1位から転落しても変わりませんでした。
そのため、ココカラファインへの資本業務提携・経営統合の提案は驚きをもって受け止められています。それだけ、ドラッグストア業界は再編待ったなしということです。
マツモトキヨシとは対照的なのがスギHDです。積極的なM&Aや出店攻勢により、規模を拡大してきた経緯があります。2006年の売上高はマツモトキヨシの半分にも及びませんでしたが、直近では間もなく追い越すというところまできています。
状況から察するに、スギHDは次の買収候補としてココカラファインを狙っていたのでしょう。そこへマツモトキヨシとの提携話が出てきたため、慌てて自らも提案したというわけです。拡大に積極的なスギHDらしい動きと言えるでしょう。
モテモテすぎて困っているのが、ココカラファインです。
同社は2008年にセイジョーとセガミメディクスが経営統合して誕生しました。
セイジョーが東京、セガミメディクスが大阪の企業だったことから、関東・関西の都市部に強い特徴があります。マツモトキヨシは関東、スギHDは中部地方が主力ですから、いずれもココカラファインとは補完関係にあるのです。
【ドラッグストア各社の主要エリアと売上高】
これまでのドラッグストアの再編を見ても、ほとんどがエリア拡大のためのものです。まさに陣取り合戦の様相を呈しているのです。
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