「内定辞退率」を顧客企業に提供していたことと、それを受けての13社による株式の売出しによりリクルート株が急落しています。この急落は買いなのでしょうか?(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
不祥事で急落するリクルート<6098>の企業価値を改めて確認
今回の株価下落はどうして起こったのか
リクルートHD<6098>の株価が急落しています。

リクルートHD<6098> 週足(SBI証券提供)
要因の一つが、「リクナビ」における不祥事です。「内定辞退率」をAIで算定し、顧客企業に提供していたことが問題視されました。顧客企業がそれを見て採用の可否を決めていたとしたら、就活生にとって由々しき問題です。
もう一つの要因が、株式の売出しです。リクルートは2014年に上場しましたが、5年経った今もなお取引先大企業が株式を多く保有しています。今回は、凸版印刷や三井物産や大日本印刷など13社による売出しです。

出典:株探 リクルート大株主
株式の売出しは、企業の価値には直接の影響がないものの、株式需給の悪化を通じて一時的に株価に悪影響を与えます。不祥事の後だったことも、株価の下落に追い打ちをかけました。
「内定辞退率」問題はAIを使う上で避けて通れなかった
AIによる内定辞退率の判定は、時代の流れの中で起きてしまった軋轢に見えます。個人情報とAIは切っても切り離せない関係です。現にFacebookやGoogleは、収集した個人データをAIで解析し、最適な広告を表示しています。あなたのデータもすでにAIの手中にあるのです。
AIによる「予測」は、データが集まれば集まるほど正確性を増します。すなわち、AI社会ではデータを多く持つ企業ほど、勝ち組になれる可能性が高くなるのです。
リクルートは、日本で最も消費者データを持つ企業の1つであることは間違いありません。就職関係だけでなく、「ホットペッパー」や「SUUMO」などを通じて大量の、しかも質の高い情報を持っているでしょう。
したがって、AIを使うことは必然の流れだったのです。事業戦略としてこれをしないという選択肢は取り得ないでしょう。今後は体制を整備したうえで効果的なビジネスを模索することが想定されます。影響は小さくないとは言え、長期的な戦略に影響を与えるとは私は考えていません。
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