転機となったアリババへの投資
翻って現在はどうでしょう。
ソフトバンクグループはいつの間にか「投資会社」に変貌しています。転機となったのは、アリババへの投資が成功したことです。アリババ創業者にジャック・マーに欲しいと言われたものを大きく上回る金額を握らせ、結果として何千倍ものリターンを得ました。
いまやソフトバンクグループの価値の大半もアリババとなっています。

出典:ソフトバンクグループ 2020年3月期第2四半期決算説明資料
10兆円にもおよぶビジョン・ファンドを立ち上げると言い始めたのもこの頃です。自分の目利き力があれば、第2、第3のアリババを発掘できると考えたのでしょう。
しかし、実際に投資していたのは、不動産会社の域を出ないWeWorkや、すでに大きくなりつつあったUberなどのライドシェア各社です。
経営の目的は「顧客の創造」にある
この動きを見て思うのは、今のソフトバンクグループには「顧客の姿」が見えないということです。
「AI革命」を掲げていますが、実際に投資していたのが不動産会社ということなら「何がしたいのか?」ということになりますし、すでにある程度大きくなった企業へ投資するなら、ソフトバンクでなくても良かったでしょう。
誰にとって、どうやって世の中が良くなっていくのか、そこでソフトバンクがどのような役割を果たすのか、行動と結果が結びつかないのです。
WeWorkに関しても、一刻も早く利益を確定しようと上場を急いだ節がありました。今の姿を見ていると「そこにいる顧客」ではなく、投資で成果を出すことばかりに精を出しているように見えるのです。そこに哲学は見えてきません。
経営学者のピーター・ドラッカーは、経営の目的を「顧客の創造」だと言いました。ソフトバンクはそれを果たしているでしょうか。私には顧客の姿は見えず、利益を追求しているだけのように感じられます。
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image by: glen photo / Shutterstock.com
『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2019年11月17日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。