貧富の差が大きく拡大
安倍政権ではこのほか、派遣社員など、非正規雇用の利用を促進した結果、4割近い労働者が非正規雇用となり、平均年収が180万円以下で、正規労働者の4割以下の給与しか得られず、しかも年金にも入れない労働者も少なくありません。
この結果、労働分配率は着実に低下し、個人の株式保有は170兆円余りで、金融資産全体の1割にも届かず、株高の恩恵は一部の資産家に限られています。
この結果、実質GDPに占める純粋家計消費(民間非営利団体の消費や実体のない帰属家賃を除いた消費です)の割合は足元で42.2%で、10年前の47%から大きく低下しました。その低下のほとんどがアベノミクスを実施してからのものものです。
労働者の取り分が減り、賃金が減る中で円安にして物価を上げようとすれば、実質賃金はそれだけマイナスになり、実質金利もマイナスとなって家計を圧迫します。
所得分配の修正が必要
つまり、個人の犠牲のもとに企業を儲けさせようとしたのですが、企業はそれを労働者に還元せず、しかも企業が利益を設備投資で支出するプラス面よりも、家計が圧迫されて消費が収縮したマイナス面か大きく、そのために低成長と、景気後退の長期化をもたらしました。
つまり、新政権がこのままアベノミクスを継承すれば、日本経済は長期低迷を余儀なくされます。
これを打破するためには、個人から企業への偏った所得分配を是正し、つまり労働分配率を長期的な平均水準に戻し、金融政策もマイナス金利による円安や実質金利の引き下げをやめ、金融機関や預金者に利益を戻すことです。
個人消費を活発化させ、国内需要を高めないと、企業は国内投資もできません。政権が変わった今こそ、政策も根本的な見直しが必要で、その良いチャンスでもあります。
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『マンさんの経済あらかると』(2020年9月23日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。