日産自動車が三菱自動車へ2,370億円を出資し、発行済株式の34%を取得することになりました。日産は筆頭株主となり、三菱自動車を事実上傘下におさめることになります。三菱自動車の株価は一時ストップ高まで上昇しました。事例を踏まえ、企業買収とバリュー株投資の関係について考察します。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
企業買収とバリュー株投資の関係~日産×三菱自の事例から
“バーゲン価格”で三菱自動車を購入した日産自動車
先日の記事の中で、私は三菱自動車を「バリュー株」として紹介しました。
燃費不正により株価は発覚前の半分程度にまで落ち込みましたが、同社の事業は欧州やアジアなどの海外がメインであり、問題が海外にまで波及しない限り企業価値の低下は限定的という主張です。
もちろん、日産による出資は想定していませんでした。見方を変えれば、日産がバリュー株投資を行ったと言えます。
出資の前提となった株価は468円と、不正発覚後の低い株価を基準としたものです。日産はそれまでも三菱自動車との提携を模索していたとのことですが、このタイミングで“バーゲン価格”で株を取得できたことになります。

三菱自動車工業 <7211> 月足(SBI証券提供)

日産自動車 <7201> 月足(SBI証券提供)
企業の価値を一番よく分かっているのは、投資家ではなく事業家です。競合他社の株価がバーゲンセール状態となっているなら、すかさず買収することで低コストで事業拡大を行うことができるのです。
これを徹底している事業家が、日本電算の永守社長でしょう。