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ゴジラのグローバル化、その顛末とは=佐藤健志

そうです。
まずアメリカに買われ、次に中国に飲み込まれるのです!

『シン・ゴジラ』がヒットしたのは、じつは日本だけの話。
海外興行は惨敗の連続でした。
ヨーロッパなど、スペインだけの上映で、売り上げは総額91万円(!)だったとのこと。
http://www.asagei.com/excerpt/76940

しかるに今や、ゴジラはハリウッドでもつくられている。
わけても2014年の『GODZILLA ゴジラ』は、全世界で5億ドルあまりを稼ぎだしたうえ、内容面でも高く評価されました。

世界的に見れば、ハリウッド版ゴジラの方が、日本版ゴジラよりポピュラーな存在になりつつあるのです。
ところがお立ち会い。

ハリウッド版ゴジラの製作会社「レジェンダリー・ピクチャーズ」は2016年1月、
中国のコングロマリット「大連万達グループ」に35億ドルで買収されました。

同時に大連万達グループは、中国版ハリウッドとも呼ばれる巨大映画村
〈オリエンタル・ムービー・メトロポリス〉
を8000億円かけて青島に建設。

で、オリエンタル・ムービー・メトロポリスで最初に撮影される作品のひとつこそ、
2019年公開予定のハリウッド版ゴジラ映画『GODZILLA: KING OF THE MONSTERS』なのです!

同作品への出演が決まった女優チャン・ツィイーなど、
中国最大級のSNS「微博」に、自分とゴジラのコラージュ画像を掲載しました。

ツィイーがゴジラの肩に手をかけて
これからは姐さんが面倒みてやるよ」と話しかける、というもの。
ゴジラは涙を流して喜んでいます。
https://twitter.com/naka_kane/status/874287358891311105

要するに世界の映画ファンは、〈中国資本のもと、アメリカ人によって中国で撮影されたゴジラ〉を、ほどなくして観ることになる。
これがゴジラの世界進出、ないしグローバル化の顛末なのです。

エドマンド・バークは『フランス革命の省察』において、
〈革命で軍が暴走すれば、フランスは巨大怪獣に襲われたも同然の状態になる〉
旨を警告しましたが、
グローバリズムという世界規模の急進革命は、巨大怪獣たるゴジラまで飲み込んでしまったと評さねばなりません。

『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
http://amzn.to/1jLBOcj(紙版)
http://amzn.to/19bYio8(電子版)

にもかかわらず、わが国の保守派と呼ばれる人々の多くは、
『シン・ゴジラ』にナショナリズムの要素が見られるというだけで有頂天になってしまい、
〈日本人のプライド〉が世界に向けて発信されるんだ! とばかり、
クールジャパンのお花畑的妄想に酔ったのでありました。

だ・か・ら、
『右の売国、左の亡国』と言うのですよ!
https://www.amazon.co.jp/dp/475722463X(紙版)
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中島春雄さんの逝去は海外でも報じられ、各地で惜別の声があがっています。
たとえばロイター。
http://www.reuters.com/article/us-japan-godzilla-idUSKBN1AO0OQ?utm_medium=Social&utm_source=twitter

あるいはイギリスの新聞「ガーディアン」。
https://www.theguardian.com/film/2017/aug/08/haruo-nakajima-actor-who-played-the-original-godzilla-dies-aged-88?CMP=twt_gu

追悼ツイートも3つご紹介しましょう。
https://twitter.com/eliza2854/status/894721263054323712
https://twitter.com/Mike_Dougherty/status/894701922346729473
https://twitter.com/paulcook68/status/894609600435171332

とはいえゴジラのアメリカ化や中国化が進む現在、
中島さんの訃報は、ゴジラが日本の怪獣だった時代の終わりを告げるものかも知れないのです。
われわれはこのことを、どう受け止めるべきでしょうか?

ではでは♪

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年8月16日より

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