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目先リスク残るも、年央に向けて上昇が見込める日経平均株価=馬渕治好

(2)地政学的リスク

1/3(日)のサウジアラビアのイランとの外交断絶や、1/6(水)の北朝鮮の水爆実験(と北朝鮮は言っている)が、株安要因として挙げられている。

もちろん、それぞれ株の好材料ではありえないが、サウジアラビアとイランが一戦構えるわけではなく、北朝鮮がすぐにどこかに攻め入るわけでもない。

サウジアラビアの外交断絶は、原油価格を上げたいための策だという説も聞くが、うがちすぎだろう。実態は、前アブドラ国王死去(2015年1月)以降、内部の主導権争いが激化し、功をはやってのシーア派死刑執行が急きょ行われた、との観測もある。

実際、そうした背景事情を見抜いた原油市場では、過剰気味な原油供給状況に大きな変化はないとして、原油価格の軟化が続いている。それで米国のエネルギー業種の株価が売られるのはわかるとしても、原油輸入国である日本株が売られるのはやり過ぎだ。

しかし、「原油安→日本株安」というやり過ぎは昨年終わりころから続いており、市場心理がこうした根拠なき株安の恐れにとらわれていると推察される。

(3)円高

ほぼ全面的な円高が進み、米ドルの対円相場は一時117円台に突入した。

円高が生じるような正当な理由はなく、市場では「リスク回避のための円高」と言われている。1/6(水)の北朝鮮の核実験も「リスク回避のための円高」の一要因として挙げられているが、北朝鮮に近い韓国ウォンが売られて、ウォン安・円高になるのはうなずけるとしても、北朝鮮から遠い欧米の米ドルやユーロが売られ、北朝鮮に近い日本の円が買われるのは理不尽だ。

また、今週は中国が元相場の基準値を安い方向へ動かしており、これが円高要因だと言う向きもあるようだ。しかし中国元安で、中国が輸出競争力を増し、日本が競争上不利になるのであれば、円安になるはずだ。

このように、「とにかくどの国、どの地域のどんなリスクでも、『リスク回避のための円高』なのだから円を買う」ということになってしまえば、日本株が世界で最も大きく暴落しても、富士山が噴火しても、日本が沈没しても、そうした投資家は円を買うのだろう。こうした投資家を、「パブロフの犬」 と呼ぶそうだ。

こうした反射神経的な円買いは、全く理不尽ではあるが、過去にそうした円買いの例は多々ある。このため、まだ短期的に、一段の円高が進む可能性は否定できない。ただし、もちろん実態に反しているので、円高は長続きはしないだろう。

【関連】サーキットブレーカー制度を緊急停止、中国を追い詰めた悪循環の仕組み=久保田博幸

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2016年1月7日号外)より
※チャートと太字はMONEY VOICE編集部による

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