急に態度を変えた韓国
韓国が現在、ウォン危機認識を持ち始めたのは、先に触れたように3月10日以降と見られる。
それ以前は、日本へ仇討ち精神で臨んでいた。日本による韓国人の入国制限措置に対抗して、韓国大統領府報道官は8日、日本だけに入国制限措置を取った理由として、日本の不透明な検査方式で「コロナ感染者の数が氷山の一角かもしれない」という米国CNNテレビの報道を引用したほどである。あからさまに、日本を侮辱した内容だ。
それが急変したのは3月11日、日韓通商協議(半導体3素材輸出管理問題)で16時間の長時間協議で結論が出なかったにもかかわらず、韓国が強硬手段に出ず「協議続行」に同意した。抗議声明も出さなかったのだ。
これは、従来の姿勢から見て大きな変化である。その後、韓国外交部からGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄論をちらつかせることもなかった。
08年の危機構造に類似
韓国が、対日戦略を変えたのはウォン危機への認識が深まってきたのであろう。
ウォン相場が最近、頻繁に1ドル=1,200ウォンを割り込んでいるからだ。韓国当局の介入で「ウォン投機」の芽を摘んでいる感じだが、国際収支が変調を来たせば、介入で間に合わなくなろう。
韓国経済は、2008年危機に似通ってきたのだ。その特色は、次の点にある。
1)コロナ不況は、リーマンショックと同様に世界経済に大きな影響を与え、韓国の輸出を減少させる。今年の世界経済の伸び率は、2.5%を割る見通しが濃い。これは、世界経済が不況と見なされる。
2)輸出減は、経常収支赤字に転じる危険性を持ち、外貨準備高を減らすリスクをもたらす。そうなると、ウォン安相場に拍車がかかる。2008年に類似した国際収支構造が見込まれる。
3)韓国との通貨スワップ協定では、日米が未契約である。日米ともに韓国と、外交的な溝が深まっていることが背景にある。韓国は、いつまでも日本に楯突いていると、米国との関係までも悪化させる。そうなると、韓国経済はさらに落込む危険性が増す。
今後、韓国経済が直面する問題は、以上の3点に要約できよう。
特に、(3)の通貨スワップ協定で、日米が未契約状態であることは痛手だ。「ウォン」は、世界最強通貨「ドル」と安全通貨「円」のバックアップを失えば、彷徨しかねない危険性を持っている。
韓国が、前記の日韓協議で日本への抵抗姿勢に封印しているのは、その利害得失を計算している証拠と見られる。
韓国は、土壇場に来て自らが抱えるリスクに気付いたようである。だが、韓国の反日姿勢は強烈であっただけに、日本国内で日韓通貨スワップ協定に賛成する世論は高まらないであろう。韓国にとって、これが最大の誤算に違いない。
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勝又壽良の経済時評
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経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。