中国企業の米上場廃止まで検討?
またトランプ大統領は、「米国民が中国企業に投資するリスクを回避するための方法を検証する」と表明。「投資会社は、共有する規則の下で運営されていない中国企業に投資する不当な隠れたリスクに顧客をさらしてはならない」とし、政権内の金融市場に関する作業部会に「米国の投資家保護を目的に、米株式市場に上場する中国企業のそれぞれの慣習を検証するよう指示した」と明らかにした。作業部会にはムニューシン財務長官、パウエルFRB議長、米証券取引委員会(SEC)のクレイトン委員長らが参加する。
トランプ大統領は厳しい姿勢を示しながらも、中国との対立が一段と精鋭化すれば、難航した協議の末にようやく得られた第1段階の通商合意が覆されると認識しているとみられる。香港には約1,300社の米企業がオフィスを構え、約10万人を雇用。大統領はこうしたことにも配慮しているものとみられる。
ついに世界保健機関(WHO)を脱退へ
さらに、新型コロナウイルスへの対応などをめぐって「中国寄り」と批判してきた世界保健機関(WHO)に対し、米国が求めてきた改革を行わなかったと指摘し「関係を断絶する」と断言し、脱退の意向を表明した。そのうえで、WHOへの資金拠出を他の国際公衆衛生活動に振り向けるとした。
また、いったん使用を控えてきた「武漢ウイルス」の名称も再び持ち出し、中国が新型コロナ感染を隠蔽したと改めて批判。香港の自治侵害に関わった中国や香港の当局者に対して制裁を科す方針も示した。
トランプ大統領は強硬姿勢を強めすぎることで、米国経済が悪化し、それが自身の再選を妨げることはしたくないという思惑があるのだろう。
しかし、進んだ道を戻るわけにはいかない。すでに戻れない道を米国は進み始めている。それは「覇権国家を中国に譲る」という道である。
中国は強気姿勢を継続
中国の李克強首相は28日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の閉幕に当たって記者会見した。
新型コロナウイルス流行で落ち込んだ景気の回復に向け刺激策を打ち出す余地はあるが、大規模な措置は想定していないとした。湖北省武漢が発生源になった新型コロナの影響から中国経済は回復しつつあるが、第1四半期の成長率は前年同期比6.8%減少し、四半期の統計でさかのぼれる1992年以降で初のマイナスとなった。
また、今回の全人代でも19年ぶりに成長目標の公表を見送った。李首相は新型コロナ流行を制御できたとし、今年もプラスの経済成長達成に努めると表明。政府は必要に応じて支援するとし、「政策余地は備えている。タイムリーに新たな政策を打ち出すことは可能で、中国経済の安定運営を維持するためにためらわない」と強調した。一方で、経済成長率を重要視していることに変わりはないとした。
また中国は大規模な刺激策を必要としないものの、「例外的な状況で例外的な措置が必要となるため」流動性は増加すると指摘した。また、経済政策について、雇用安定と中小企業の存続など6つの優先課題に注力しているとした。政府は先に、20年の財政赤字見通しを対GDP比で少なくとも3.6%とし、昨年の2.8%から引き上げた。これは、政府活動報告で打ち出された財政刺激策の規模はGDPの約4.1%に相当する。