“プラス”74%? それ、前年比“マイナス”60%です
株式市場の性質として、短期的には絶対値よりも方向性で動く傾向があります。良い方向に向かえば大きく上がり、悪い方向に向かえば大きく下がります。今は最悪の状況から脱したことで、方向性としては「良い」となりますが、経済が抱えている問題はそこではありません。
アメリカン航空は6月3日、7月の便数が現在より74%増加すると発表しました。これを受け、株価は2日間で57%上昇していました。

AMERICAN AIRLINES GROUP<AAL> 日足(SBI証券提供)
しかし、この74%の増便でも、前年同月比では40%(▲60%)という水準です。ソーシャル・ディスタンスのため満席にはできないでしょうから、旅客はもっと少なくなります。これでは経営はとても持たないでしょう。このあたり、市場は完全に冷静さを欠いているように見えます。
成長はいずれ鈍化する……PER無視で買う危険性
このような時に、特に好調なのが「高PER銘柄」です。高い成長性が買われ、株価は青天井に伸び続けます。銘柄で言えば、エムスリー<2413>や、IRジャパン<6035>などが挙げられます。

エムスリー<2413> 日足(SBI証券提供)

アイ・アールジャパンホールディングス <6035> 日足(SBI証券提供)
これを見ていると、「もうバリュー投資なんかやめて、高PERの成長株を買えば間違いないじゃないか」と思ってしまいがちですし、実際にそのような言説が多く見られます。バフェットですら方々で揶揄されている状況です。
これらの企業が業績を伸ばしていることは間違いありません。そうなると「もう下がることはないんじゃないか」と思ってしまいがちですが、ここに大きな落とし穴があります。