個人消費は内閣府と日銀で評価が割れる
モノの輸出はGDPの14%に過ぎませんが、個人消費はGDPの約6割を占めるので、これの好不調がGDPにはより大きな影響を持ちます。
そして今回の新型コロナウイルスの影響は、消費関連分野でも大きく明暗を分けています。
コロナ前よりも消費水準が4割から6割も増えているもの(宅配、SNSコンテンツ、酒屋など)がある一方、コロナ前に比べて9割以上も減少しているもの(パック旅行、宿泊など)もあります。
かつてない今回の需要分断は、統計によって「個人消費」の様相が異なる結果をもたらしています。残念ながら個人消費全体を表す統計はなく、いくつかの関連統計を組み合わせて評価するのですが、統計によって個人消費の落ち込み度合いが変わってきます。
そこで消費の全体像を反映する指標を内閣府(消費総合指数)と日銀(消費活動指数)が考案しました。
これまで両者に大きな差は見られず、いずれもGDPの個人消費を代弁するものと豪語していました。ところが、日本でコロナの影響が出始めた3月・4月には、両者の間に大きな差が出るようになりました。
例えは、4月の消費水準を1-3月と比べてみると、内閣府の「消費総合指数」は7.7%減となっているのに対し、日銀の「消費活動指数」は14.0%の大幅減となっています。
両者がここまで大きく乖離したことはこれまでありません。
消費関連統計の組み合わせが違うために生じたと考えられますが、それだけ今回のコロナの影響は、指標・統計に大きなブレをもたらしているのが特色と言えます。
内閣府は需要面で総務省の「家計調査」を、供給面で経産省の小売り統計などを、サービスを第三次産業活動指数を用いて「統合」しています。
一方、日銀は家計調査や第三次産業活動指数を使わず、主に供給サイドの指標を広く統合して消費統計をまとめ上げています。
この指標作成の過程の差によって今回の数字の差が大きく出たことになります。
では、どちらが実態に近いのでしょうか。
家計調査のゆがみ
その点、「家計調査」にはサンプル数の少なさに加え、対象に公務員が多いといわれ、職の安定が確保された対象が多い分、コロナの影響が出にくくなっている面があります。
実際、4月の勤労者の実収入は安定していて減っておらず、自動車購入費が増えています。新車販売は27%も減っている中でです。4月の「家計調査」は消費を過大に表示している可能性があります。
また「第三次産業活動指数」についても、個人向けサービス以外に企業向けも含まれているので、純粋な消費関連データとは言えません。
それでもコロナ以前はこれらが消費を大きくゆがめることにはならなかったのですが、コロナが分野ごとに、主体ごとに大きな差をもたらすようになったため、この2つの統計が消費を却ってゆがめる面を持っています。その点、日銀の「消費活動指数」に多少分があると考えられます。
それだけ4-6月の個人消費は大きな落ち込みがあったと見られ、帰属家賃を除いた純粋個人の消費は10%以上の大幅減となる可能性を示唆しています。
先の「外需」と個人消費だけで4-6月のGDPを10%押し下げる面があり、これに設備投資や住宅投資、民間在庫の減少を加えると、GDP全体は年率40%以上の大幅縮小の可能性が出てきました。
おまけに、3月から景気が急減したため、例えばGDPに近い「全産業活動指数」の3月分は、1-3月の平均より2.5%ほど低くなっています。つまり、4月以降横ばいでも4-6月は2.5%(年率約10%)のマイナス成長になる「マイナスの下駄」を履いています。
従って、これも加味すると、4-6月のGDPは年率50%近いとんでもないマイナス成長となる可能性を秘めています。