楽天モバイルの勝ち筋は?
――auローミングの終了や、来年は1年間の無料プランが終了するなど、楽天モバイルにとって向かい風が強いように感じました。
――この点についてもコミュニティから質問をいただいています。2023年に楽天はモバイル事業で黒字化を目指していますが、そこまでの勝ち筋をシバタさんはどのように見ていらっしゃいますか。
このビジネスはポイントが3つあると思っています。1つ目が資金繰りです。投資をするので、それだけのお金を集めなくてはいけないということです。2つ目がユーザー獲得で、3つ目が実際のサービスレベルです。
1つ目の資金繰りは全く心配していません。銀行を持っているので、お金を借りようと思えばいくらでも借りられるはずです。
2つ目のユーザー獲得も全く心配していません。楽天カードを見たら分かるように、数年間キャンペーンや広告などユーザー獲得施策をしっかりやっていれば、いつかはユーザーは増えるでしょう。
3つ目のサービスレベルについては、全く分かりません。先ほどのレポートに出ているような「繋がらない」という話が、どれくらいすぐ直るのかというのが一番のポイントだと思います。
これが直らないようでは、いくらお金やユーザーを集められても、繋がらない携帯回線は絶対に嫌がられるので、そもそも成り立たなくなってしまいます。繋がらないエリアを、早いタイミングでいかに少なくするかがすごく重要になってくるでしょう。その1点に尽きると思います。
――個人的にもかなり期待しているので、頑張ってほしいです。
期待しているキャリアやサービスはある?
――来年現状から大きく変わりそうなど、シバタさんが注目・期待している携帯キャリアや分野はありますか。
5GはB2Bが大事だと思っています。ドコモの値下げの背景にも、B2Cはレッドオーシャンになっており厳しいため、B2Bに力を入れるという方針の元で、あれだけの値下げをしてきているはずです。
B2BのIoTの回線を、どの会社がどのようにに取っていくのかというのが、一番見たいところです。特に低遅延という点はすごく機械と相性が良いので、そこがどうなっていくのかに一番注目しています。
例えば日本には今、何千万台もの車があります。実はテスラにはAT&TのSIMカードが入っており、今後車にSIMカードが必要になる可能性があります。これから全部の車がインターネットに繋がる車に置き換わっていくとすると、数千万台分の回線が必要になるんです。
その他にも家電や信号機など、色々なものがインターネットに繋がるようになるかもしれません。そう考えると人間用ではなく、B2Bのモノ用の回線の方が増えるんです。
B2BのIoT向け(機械・デバイス用)の回線の市場を、どの会社が最初に動き出して、どう取っていくのか、注目したいと思います。
――それは携帯キャリアの方から営業をかけるのでしょうか。
そうですね。KDDIが数年前に買収したソラコムという会社が、まさにこの分野をやっています。
デバイスやハードウェアを作っている会社は携帯回線が必要になるので、携帯キャリアからサービスを買うしかありません。
普通のSIMカードを機械に差し込むだけなので、別に難しいことはないです。そういう専用のハードウェアやチップなど、色々なものはすでに出回っていますが、それらが5Gになることで今までよりもさらに低遅延で利用できるようになります。
機械はそこまで多くのデータをやり取りしないので、高速かどうかはあまり関係ありません。低遅延で、リアルタイムでデータの行き来ができるということがすごく重要です。
――そのあたりの動向を、また来年も追っていきたいと思います。