現在の株価は妥当か
株価ですけれども、業績低迷していたことから2018年をピークにずっと下がり続けていました。

パナソニック<6752> 週足(SBI証券提供)
コロナ前で少し戻りかけていたのですが、やはりガッツリ落ちたということになっています。
しかし直近では市場全体が好況ということもあって、パナソニックのようないわゆるバリュー的な株と言われるところでも、株価が戻ってきまして、今1,300円、1,400円前後という形になっています。
表面的なPERを見ると20倍程度ということで、少し割安ではないようには見えるのですが、これは目先のコロナの影響も受けた業績に対するPERですから、やはり少し調整してみる考えが必要です。
直近で構造改革によるコスト削減が進んでいると言いましたが、それを元にどのような業績になるかということを想定してみたいと思います。かなりポジティブに見積もった数字だということはご理解下さい。
直近の売り上げ予想がコロナの影響を受けて6.6兆円ですので、上手くいって7兆円ぐらい出たとしましょう。それで今の営業利益率が3、4パーセントというところなんですが、これが構造改革が効いて6%出たとしましょう。すると営業利益が420億円、そこから導き出せる純利益がおよそ300億円ということになります。
今の時価総額がおよそ3.2兆円ですから、これを純利益300億円で割ることで、PER10.7倍という数字が出ます。
株式に馴染みがある方だと比較的わかりやすいかと思いますが、PER10.7倍ということになると比較的割安な数字と見ることができるではないかと思います。
もっともかなりポジティブな見積もりに対して10.7倍ですから、そういった意味では今の株価とわりと妥当なのかなというところが私の考え方です。
確かに言えることは、少なくとも構造改革で利益が維持される分にはそんなに割高ではない、急激に下がるというようなものではないと思うのですが、一方では成長性がないとそこから上がるのは難しいということになります。
求められるものは「強いアピール」
ここからは私の意見ですが、パナソニックはまだまだ厳しい環境に置かれているということは確かだと思います。
何故なら、これから重要になる成長分野と目されているところは「車載電池」という、何とも競争の激しい業界なわけです。
いま間違いなく行われていることはイーロン・マスク率いるテスラによって、良いように使われているというのが正直な印象です。そのテスラもかなりしたたかで、パナソニックだけと一緒にやっているわけではなくて、実は中国の世界最大の車載電池会社と言われる、CATLとも取引をしているということです。また中国にはBYDという、自ら電気自動車も作っている電池メーカーもあります。
これらに対して特に中国はいま国内で電気自動車をとにかく世界一の市場にしようということをやっていますから、もちろんそんな中ではパナソニックよりもCATLとかBYDの方が当然有利になってきますし、利益度外視でシェアを取るということが大切にもなってきます。
規模の経済が間違いなく効いてくるところですから、そこが重要になってくるということになって、それを中国の習近平の後押しでどんどんやっていくということになりますと、やはりパナソニックとしては売上増がずっと続くという可能性もあるわけです。
そうなってくると先ほどの資産はあまり使えなくて、利益はもっと下がり続けて、しかもいつ利益を取っていったらいいのかわからないし、負けてしまったらもマイナスで終わるということも十分考えられます。
それに対してどちらかというと安定的に期待出来るのは、住宅設備とか空気清浄機を始めとする家電ということになります。
そちらで先進的なIOTの製品とかを出し続けていくことができれば、パナソニックといえばこういった家電設備だということをアピールしていけるのではないかと思います。
現状のところ、そこまでのアピールには正直至ってないと思います。
私もパナソニックのCMを見ていてもまだ洗練されてないなというところを感じますし、また決算説明会なんかを聞いても正直、受け答え聞いていると、どこか経営者が他人事なのではないかと思えてきます。
例えばテスラに関して質問を受けた時には、テスラなんか十分な知財を持っていないということを言ったり、中国勢に関してもあっちは CATLが強いけど、うちはこっちが強いから大丈夫だよということを言ったり、どうも危機感や当事者意識というものを感じられません,
今度社長が交代するということでその先どうなりますかという質問を受けたら、「それは次の社長に聞いてください」みたいなものすごくドライなやり取りをしていました。こんな状況であるうちは、まだまだ成長というのは難しい気がしています。
今の構造改革に関してはこれは利益を間違いなく増やすものですから評価しているのですが、そこから先も力強さを感じられるという状況ではないというのが私の見立てです。
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