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なぜ中国の「自国通貨安=人民元安」は悪材料とされるのか?=田代尚機

実は、資金流出が中国経済に与えるダメージは大きくない!

ややネガティブに書きすぎてしまった。現段階では、資金流出が中国経済に大きなダメージを与えるほどかといえば、それほどでもない

外貨準備高が足元で減少しているが、2000年から2014年第2四半期あたりまでは人民元上昇圧力が強く、外貨準備高は増加の一途をたどった。この間の外貨準備高の累積増加額はそれ以降の累積減少額の7倍以上である。10数年も資金流入圧力に耐えた後、資金流出圧力がかかるようになったわけだが、そうなってからまだ2年しかたっていない

中国人は自国の経済や通貨に信頼を置いてないからだと考える方もいるようだが、長い間、資金流入圧力にさらされてきたことからわかるように、ほとんどの中国人はそんなことを意識していない

2015年末時点の中国の外貨準備高(金を含む)は3兆4052億5300万ドルで世界第1位である。第2位の日本は1兆2330億9800万ドルに過ぎない(データ:グローバルノート)。2016年11末現在では、中国の外貨準備高は3兆1410億8800万ドルある(中国人民銀行HP)。

外貨準備高はドル資産だけで構成されているわけではない。ドル高による他通貨の目減り分があることも考慮すれば、11か月で10%にも満たない減少は大した額ではない。そもそも現状でも中国の外貨準備高は不必要に多すぎる。GDP比でみても、日本より大きい。

また、中国では、資本・金融取引は当局の厳しい監督管理下にある。管理を強化すれば資金流出はコントロールできる。為替相場にしても、人民銀行が介入する以外にもコントロールする方法はいくらでもある。人民元安、資金流出に関する経済・金融リスクをことさら心配することはない

16日に閉幕した中央経済工作会議の内容を見ると、「重要ポイントとして、不動産市場の安定的で健全な発展を促進する、金融リスクを防ぎ、コントロールする」などといった文言がある。

今後当局は資金流出の背景にある海外への投機・投資を抑制し、金融機関のレバレッジを縮小させようとするだろう。為替相場では外部環境がどうなろうとも実質的に通貨バスケット制が維持され、株式相場では当局が急騰を防ぐ一方、下落局面では長期資金の導入を促すことで、安定が保たれるだろう。

中国経済・金融に関する来年のキーワードは管理の強化であり、安定である。

(12月17日作成、有料メルマガから一部抜粋)。

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中国株投資レッスン』(2016年12月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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