真の「人づくり革命」の鍵は教育にこそある
「働き方改革」だけを見ても疑問点ばかりですが、さらに大きな矛盾があります(図-23右)。
「人づくり革命」と「生産性革命」を車の両輪として、デフレ脱却に向けて税や予算などの政策を総動員する――安倍首相はそう言いますが、今の状態で「生産性革命」をやると、再教育ができないために人が余っていくばかりなのです。それと「人づくり革命」とは全く両立できません。
そしてまた、デフレ脱却と言うけれども、60時間に残業を制限してどうやって脱却するのでしょう。
今の日本に一番必要な人材とは?
こういうふうに何も考えずにものが言えるのが、安倍さんが強い理由です。日本のマスコミで、「はい」と手を挙げて「生産性革命と人づくり革命はどう両立するのですか?」と質問する人が誰もいないのです。
今の日本に一番必要な人はどういう人でしょうか? それは“尖った人”です。世界を見れば、例えば今の中国では4~5人が新しい経済をつくり出しています。
米国も同様で、そういう人が今度は次の50人、その次の500人の“尖った人”をつくり出しています。イーロン・マスクなどは性格が悪くて付き合った人が全員勘弁してくれと言うような人物ですが、やはり世の中を変える力がありますし、ジャック・マーやポニー・マーといった人たちも似たようなものです。
こうした人たちがエスタブリッシュメントの外側から出てきて、中国ではいつの間にか大改革が起こっているのです。中の上くらいの人材を大量につくっている日本の教育が最大の問題です。(次回に続く)

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記事提供:biblion
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