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見えてきたトランプ政権の崩壊シナリオ、米朝再会談の成果をどう演出するか?=江守哲

外交面でも結果はいまいち

また、外交面での成果も大げさにアピールしています。

「私が大統領でなければ、北朝鮮と戦争になっていた」。戦争になっていたかどうかは別ですが、北朝鮮の金正恩委員長との会談を実現させたことは、確かに大きな出来事でした。しかし、まだ何も達成していません。また、自身への美辞麗句も相変わらず極端です。

さらに、国際批判の絶えないイラン核合意の離脱についても「断固立ち向かう」と真っ向から反論しました。しかし、このようなトランプ流の脅しが「虚勢」であることが、徐々にばれ始めています。

ツイッターでの乱暴な言葉も、いまや誰もビビることがありません。通用しなくなってきています。

一般教書演説で見せた「野党へのすり寄り」

これから2年間の大統領職を全うに務められるのか、かなり怪しくなってきました。

米国株は確かに17年は大きく上昇しましたが、18年は10月以降に急落し、マイナスとなりました。また、3%成長を公約した米経済も19年後半から減税効果が剥落し、大統領選がある20年の成長率は1%台に下がるとの見方もあります。

米中貿易戦争の影響が企業業績にも出始めており、いよいよ厳しい状況に追い込まれてきたといえます。トランプ大統領自身も、自分の立場が怪しくなってきていることを理解している可能性がありそうです。

というのも、今回の一般教書演説では、下院多数派の民主党に「超党派で動くときだ」と協力を呼び掛けました。これまであれだけ横柄な態度だったにもかかわらず、急に民主党にすり寄っているからです。

そして、主要な政策である雇用効果の大きいインフラ政策と薬価引き下げなどの社会保障改革について、演説に盛り込んで民主党に露骨に歩み寄っています。

トランプ大統領は、「最先端産業にとって重要なインフラ投資を進めるため新法が必要だ」とし、公約にあげていた景気対策の「二の矢」であるインフラ投資の実現に躍起になっています。

しかし、米国では道路や空港などの整備に10年で2兆ドルもの資金が不足しています。これ自体は有権者の支持を最も得やすい政策ですが、実現性に乏しいのが実情です。

実現には民主党との協調が不可欠なのですが、これまであれだけ対立していたにもかかわらず、ここにきて二枚舌になっているのは、見ていて滑稽ですらあります。

民主党の協調も期待できない

しかし、民主党は、これまで煮え湯を飲まされてきたこともあり、トランプ大統領の要請に応じることはないでしょう。そのような腰砕けのトランプ大統領の態度は、民主党にとっては格好のネタです。

トランプ大統領はこれまで「メキシコ国境の壁を必ず建設する」と豪語してきました。しかし、これには民主党の協力が不可欠です。

選挙公約の中で保守層が最も支持する政策が「壁」だったことを考えると、なりふり構わず、実現に向けて突き進む可能性もあります。いずれにしても、トランプ大統領は公約実現に向けて、相当厳しい状況を乗り越える必要があるといえます。

しかし、いま相当有利な立場にいる民主党も、対応を間違えると、大統領選での勝利を逃す可能性もあります。

民主党はロシア疑惑などでトランプ大統領の弾劾を視野に入れています。しかし、これは制度上、実現は難しいでしょう。しかし、トランプ大統領を追い込むには十分すぎるネタです。

いまのまま、対立が解けなければ、関連予算が切れる16日に再び政府閉鎖に陥ることになります。そうなれば、トランプ大統領は当然、民主党のせいにするでしょう。

3月には連邦政府の借入額が法律で定める「債務上限」に到達する見通しです。上限引き上げが遅れれば資金が枯渇し、米国債の債務不履行という最悪のリスクも浮上する。

これまでのように、結局は両方が折れて、デフォルトにはなりませんが、今回はぎりぎりの攻防になりそうです。

Next: トランプがさらに自分の権限を増やす法案を提出? いよいよ降板か…

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