黒字確保のため、広告宣伝費を削る愚策
単に規模で劣っているだけならまだ救いようがあります。例えば、北海道を中心に展開するセイコーマートは、大手とは異なる戦略で生き残りを図っています。小さければ小さいなりの生き残り方があるのです。
しかし、ミニストップの経営を見ていると、全くそのような工夫の跡が見えません。出店は広く浅く行っていて、商品もFF以外ではこれと言ったものが思いつきません。
魅力的な商品がない中で何とか売るためには、商品を安く売るしかありません。私がアルバイトをしていた時も、やたらと「大盛り」を強調していたと記憶しています。同じ値段で大盛りなら、それは実質的な値下げです。
当然のことながら、値段を下げればそれだけ利益が減ります。同社の利益は、この数年でみるみる減少し、いよいよ赤字に転落してしまいました。
輪をかけてひどいのは、利益が減ってきてからの経営の対応です。赤字に転落してしまった昨年度は、何とかしようとしたのでしょう。あろうことか、広告宣伝費を73億円から26億円にまで削ってしまいました。
差別化が難しいコンビニ業界において、広告宣伝ができないことは死活問題です。目の前の売上が減少するだけならともかく、その間にセブンイレブンに流れてしまった顧客はもうミニストップへは戻ってこないでしょう。
広告宣伝費は当期の費用だけでなく、投資という側面があります。ミニストップの経営陣は、長期的な展望に欠かせない投資の部分から削ってしまったのです。
「貧すれば鈍す」を繰り返す経営
昨年度に赤字を出してしまった次に何をしたのかというと、店舗の閉鎖です。過剰店舗が問題なのだとしたら、その数を減らすことは理にかなっているように見えます。
しかし、問題はそのやり方でした。ミニストップの店舗の9割はフランチャイズ加盟店です。加盟店にいきなり「閉店して」というわけにはいかなかったのでしょう。直営店を大量閉鎖させるという行動に出ました。
“このような状況の中、当第1四半期においては、構造改革の一環として、直営店を中心に193店舗を閉店しました。閉店の目的は、直営店舗に関わる固定費を圧縮し、その資金を既存フランチャイズの売上向上に投資し個店の競争力を上げるためです。”(2020年2月期第1四半期決算短信)
直営店は、顧客動向を把握するなど経営改善のために重要な場所のはずです。それをコスト削減のために閉店させてしまうということは、もはやミニストップの将来に何を期待したら良いのでしょうか。経営陣は目の前の利益確保しか見えていないようです。
極めつけはこの7月からはじまった「おにぎり100円」です。これはセールではなく、常に100円です。

出典:ミニストップホームページ
いよいよここまで来たかという印象を受けます。一時的に客は戻るかもしれませんが、長くは続かないでしょう。客が買うのはおにぎりばかりではありませんから、これだけで気を引き続けるのには限界があります。安く買いたいならスーパーに行けば良いだけです。
100円のおにぎりでは利益がほとんどないでしょうから、やがて利益の圧迫要因になります。すると長期的な投資に割けるお金がなくなり、ますます衰退の一途をたどってしまうのです。
【ミニストップ経営のしくじり】
- ローソンとの経営統合の機会を逃した
- 利益確保のため、広告宣伝費を削った
- 直営店の大量閉店
- おにぎり100円で自らの首を締める