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中国の反撃「米国債大量売り」発動か。グローバル化の終焉で2020年代の世界大恐慌へ=高島康司

中国の大量売りで長期金利は高騰

この可能性を指摘する記事は多いものの、もちろん実際に中国が米国債の大量売りを行うかどうかはわからない。今週、米財務省は3年もの、10年もの、そして30年ものの国債の入札を実施する。入札に出される国債の総額は840億ドルである。

もし中国がこれから米国債の大量売りを計画しているのであれば、中国が今週の入札で米国債を購入することはないので、国債が売れ残る可能性もある。反対に、中国に大量売りの計画がなければ、中国は米国債を引き続き購入し、入札は成功するだろう。どうなるのか、今週にもある程度分かるかもしれない。

しかし、米中対立が激化し、中国が報復処置として米国債の大量売りに出た場合、なにが起こるのだろうか?

その答えは明白である。米国債の市場価格の下落と、長期金利の上昇である。

もしこれが本当に起こった場合、アメリカの景気を大きく減速させる要因になる可能性も否定できない。

レバレッジド・ローンの破綻?

しかし、長期金利の急騰のもたらす影響がもっとも懸念されるのは、「レバレッジド・ローン」という特殊な金融商品に対してだ。

なかでも「レバレッジド・ローン」の中心になっている「ローン担保証券(CLO)」だ。これは、金融機関が事業会社などに対して貸し出している債権(ローン)を証券化した金融商品だ。2007年から2008年がピークの金融危機の引き金になったものは、信用力の低い個人向けの住宅ローンを証券化したサブプライムローン証券だった、「CLO」はローンの対象先が事業会社で、個人ではないのが特徴だ。

「CLO」は、まず金融機関がローンを特別目的会社に譲渡し、特別目的会社が債券を組成し、投資家がこれを購入するというプロセスになる。投資家は、ローンからの元金と金利を受け取る仕組みだ。「CLO」向けのローンを提供する金融機関や、「CLO」を生成する特別目的会社は、商業銀行ではなく、ヘッジファンドが作った会社も多く参入している。

また「CLO」は、シニア債、メザニン債、劣後債といった支払優先順位の異なる数種類の債券が組成されている。ローンからの元金と金利は支払優先順位の高い順に支払われることになっている。なので、組成した会社が同一であっても、階層の異なる債券ごとに、それぞれ異なった格付けが付与されている。もちろん、最上位のシニア債はリスクは低いのでリターンが低く、逆に劣後債はリスクが高い分、大きなリターンが期待できる。

このような「CLO」だが、ローンの借り手である事業会社にも特徴がある。商業銀行から比較的に低利でローンを受けられる経営状態の安定した会社だけではなく、経営基盤に不安がある会社でもローンを得ることができる

これは、ローンの返済に少なからず不安のあるサブプライムローンと類似した特徴だ。サブプライムローンの返済にたとえリスクがあったとしても、それはすぐに証券化されて投資家に売り払われるので、ローンを提供した金融機関のリスクはほとんどない。

これと同様に、「CLO」向けの事業ローンも、リスクをあまり懸念することなく提供できる。このため、会社へのローン提供の審査基準は厳格ではない。こうした比較的に緩い審査基準は、「コベナント・ライト」と呼ばれている。

Next: ローン担保証券の最大の保有者は日本、被害は避けられない?

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