世界第2位の金消費国インドでは、需要が低水準に
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した、第3四半期の世界の金需要は1,107.9トンと、前年同期比3%増加しました。世界経済の減速懸念を背景に、資産運用担当者やヘッジファンドが安全資産とされる金への資金シフトを進めました。世界の上場投資信託(ETF)が価値の裏付けとして保有する金の需要は258.2トン増加し、過去最高を更新しました。ETFの需要が引き続き堅調で、他部門の需要低迷を補った格好です。
1─9月期の金需要は3,317.5トンで、同期間としては16年以来の高水準でした。第3四半期の宝飾品用の金需要は460.9トンで、前年比16%減少でした。地金・コインの需要は半減し、150.3トンでした。第3四半期の各国中銀の金購入量は156.2トンで、前年水準を大幅に下回りました。ただし、1─9月では547.5トンで、前年同期の水準を12%上回っています。
WGCは、中銀の19年通年の金需要は600─700トンと、50年超ぶりの高水準となる651.5トンを記録した昨年とほぼ同水準になるとの見方を示しています。第3四半期の金の供給は前年比4%増の1,222.3トンでした。リサイクルによる金の供給が大幅増加し、16年以来の高水準を記録しました。
一方、19年のインドの金需要は3年ぶりの低水準に落ち込むとの見通しを示しています。金を好む傾向にある農村地域の収入が減少している中で、国内の金価格が過去最高値を付けたことが響くとみられています。WGCは、インドの19年の金需要は前年比8%減の約700トンと、16年以来の低水準に落ち込む可能性を指摘しています。
7─9月期のインドの金消費量は前年同期から3分の1程度落ち込み、123.9トンにとどまったとしています。価格上昇に加え、金需要は農村地域の弱いセンチメントの影響を受けつつあるとみられています。
インドの金需要の3分の2は、農村地域が占めています。農村では、宝飾品は伝統的に貯蓄手段とされています。インドは、6─9月のモンスーン期に過去25年で最も多い降水量を記録しました。降雨は10月も続き、綿花や大豆などの作柄に打撃を与えています。
9月のインドの金先物相場は、10グラム当たり3万9,885ルピー(563.85ドル)と過去最高値を付けています。19年は年初来で約22%上昇しており、通貨ルピー安が反映されています。このように、世界第2位の金消費国であるインドの需要動向には注目しておきたいところです。
上記のように、今年も金需要は堅調なもようです。特に、中銀の購入意欲が堅調です。彼らはいったん購入すると、基本的にすぐに売却することはありません。したがって、市場に供給された金は、市場から消えてなくなることになります。この購買力は金市場の需給を確実に引き締め、金相場の根本的な下支え要因になります。